落ち着いた雰囲気の受付。現在は38店舗で展開されている
ブゥーチッブゥーチッ、ブゥーチッブゥーチッ♪ 重低音のビート音が流れる中、憂鬱そうな表情とぽっこりお腹の男性が画面に映し出される。

ペーペケッペッペペーペーペペッ♪ BGMが軽快な高音に代わると一変、別人と見紛うような引き締まった体に。ドヤ顔がまぶしい。

スポーツジム「RIZAP」(ライザップ)のテレビCMが話題だ。1月から元プロボクサーで俳優の赤井英和さん(55)を起用したことで、認知度が一気に高まった。RIZAP事業を展開するのは、上場企業の健康コーポレーションだ。

500人以上が順番待ち
同社によると、CMの反響は大きく、通常なら月間3000~4000件の問い合わせ件数が7000件と急増。しかも赤井さんと同性代の50代男性からの問い合わせが増えているという。従来の利用者が女性6割、男性4割の比率で、年齢層も女性は20、30代、男性は30、40代が中心だったことを考えると、CM効果の大きさがわかる。

現在38店ある店舗では約6000人がトレーニング中。そこに500人以上の順番待ちが発生している。RIZAPは事業開始3年目の2015年3月期末で売上高100億円を予定するが、健康コーポの瀬戸健社長は「1月で売上200億円への足掛かりをつかんだ」と、早くもその先の成長を見込む。

ただ、順番待ちが発生するほどの人気とはいえ、RIZAPの料金は高いと感じる人が多数ではないだろうか。


ファッションモデルのようなスタイルを目指す若い女性の会員も多い
実際、2カ月間トレーニングをする標準的なコースで、料金は29万8000円(税別)。それとは別に入会金5万円(同)も必要だ。だが、「結果が出るなら、この料金は高くない」と健康コーポの香西哲雄取締役は言い切る。ここまで断言するのは次のような一定の根拠があるからだろう。

まずは数値目標の実現可能性の高さだ。RIZAPでは個別トレーナーの指導の元で、週に2回、1回50分の筋力トレーニングを行う。その初回でカウンセリングを入念に行い、体重やウエストサイズなどの数値目標と「ミランダ・カー(女性ファッションモデル)のようになりたい」など目指すイメージを決めてもらう。このうち、数値目標については、これまでの経験上、実現可能な範囲がわかっているので、それに沿った数値に誘導することで実現可能性も高くできる。

食事指導も細かく徹底
また、毎日の食事指導の徹底も結果を出すに当たって大きいと思われる。外食でもいいが低糖質・高タンパクの食事を徹底させるのが特徴だ。

食事は毎回写真に撮ってもらい、トレーナーにメールで報告する。そうすると細かい指示が飛んでくる。たとえばハンバーグだったら「つなぎは何ですか。もし小麦粉だったら豆腐に替えましょう」といった具合だ。

これまでの利用者のデータを分析した結果、2カ月で16回あるトレーニングのうち7回目を終えた段階で、90%の確率で結果がどうなるかも予測できるという。なお、RIZAPではトレーニング開始後30日間については、「食事の報告を行わなかった日が合計2日以下」など一定条件の下に「全額返金保証」を謳っているが、返金に至ったのは利用者全体の3~4%程度でしかないという。


会員は5畳ほどの広さの個室ブースでトレーニングを行う
一方、会社側の視点に立つと、RIZAPは高単価であることと、他社よりも原価率を抑えていることで、広告を積極的に展開できるビジネスモデルとなっている。

原価は会社公表資料によると、売上高対比で人件費15%(他社20~30%)、地代家賃4%(同20%)、水道光熱費1%(同10%)、設備維持費1%(同5~8%)、店舗減価償却費1%(同7~10%)。いずれも他社より低い。

原価率が低い理由を、香西取締役は「他のスポーツクラブと異なり、プールやエアロバイクなど設備を利用してもらってなんぼというビジネスではないから」と説明する。

シンプルな設備でコストを抑制
実際、店舗をのぞくと、5畳ほどの広さの個室ブースにあるのは、大きなベンチプレスの機械のほかは、バランスボールや腹筋用のマットくらい。これが水道光熱費や設備維持費の低さにつながっている。

地代が低いのは店舗立地が影響している。取材で訪問した店舗は最寄り駅から徒歩5分程度だが、大通りには面しておらず、しかもビルの2階に入居しているので、誰かに教えてもらわないと気づかないくらいの場所だった。「RIZAPの場合、他のスポーツクラブのようにふと立ち寄って入会してもらうことは狙っていない。広告宣伝経由で集客するので、店舗が駅から近い必要はなく、ビルの地下でも地上でもいい」(香西取締役)という。

RIZAPの坪単価の売上高は年間約250万円。粗利率が高いため、広告宣伝への積極投資が可能となり、かつ広告宣伝費を上手く使えば20%強の営業利益率が実現できる。

今後の課題は利用期間の延伸だろう。目的がダイエットであれば、2カ月のトレーニングで目的を達成した後、利用者は通わなくなる。 そこで50~60代のシニア層を中心に健康志向を訴求することで、長期間通ってもらう利用者を開拓する考えだ。

4月からは60歳代をターゲットとしたテレビCMを始める。新たなドヤ顔が見られそうだ。