「盲導犬オスカー刺傷事件」はあまりに大きな反響を呼んだ。しかし、3ヵ月が経った今も、犯人は捕まっていない。一体犯人はどこにいるのか。取材を進めるうちに衝撃の事実が浮かび上がってきた。

「もう、いいじゃないですか、その話は……」

盲導犬オスカーの近況について尋ねると、飼い主の近所に住む住人たちは、異口同音にそう答えた。その口ぶりは、まるで何か言いにくいことを隠しているようにも取れた。

今年7月、盲導犬オスカーが何者かに背中を刺されて大騒動となったのは、記憶に新しい。

埼玉県さいたま市に住む全盲の男性(61歳)が連れていたオスカー(オス・8歳)が被害に遭ったのは、男性が自宅を出て職場に着くまでの、通勤経路のどこかだと見られる。

「フォークのようなもので強く刺された」という獣医師の診断を受け、飼い主は警察に被害届を提出した。

その時の心境を飼い主はこう語っている。

「犯人には『自分で自分の体を刺してみろ』と言いたい。同じ赤い血が出るだろうと。抵抗できない犬を狙うなんて許せない……」


通常、「犬の傷害事件」の被害届を警察が受理することはありえない。だが「オスカー事件」は日本中で話題になったこともあり、埼玉県警は異例の30~40人の捜査員を投入し、捜査に当たった。

「犯行」は白昼の、人目につく場所で行われたわけで、当初「犯人」の逮捕は時間の問題と思われた。だが、事件から3ヵ月が経過した今も、犯人逮捕の一報はもたらされていない。
(中略)
この事件は警察が犯人を捕まえられないのではない。そもそも、最初から犯人なんていないのだ―。

オスカー事件が公になった直後は、日本中で怒りの声が上がった。
(中略)
しかし、こうして日本中が激怒し、憎んだその犯人が「存在しない」とは一体どういうことなのか。本誌は事件の真相を追った。
(中略)
オスカーは刺されていなかった。これがどうやら、この事件の真実なのだ。

ではなぜ、オスカーは傷を負い出血していたのか。それについて今、予想外の見立てが浮上し、それが県警内部でも徐々に広がりつつあるという。

その見立ての中身を明かすのは、東京都渋谷区にある、どうぶつ病院ルルの塩谷朋子院長だ。彼女によると、オスカーは「ただの『皮膚病』だった可能性がある」というのだ。

「獣医師の間ではそういう意見が少なくありません。写真の傷跡は、大型犬が夏にかかる『膿皮症』によく似ています。数日前から腫瘍ができていて、膿が溜まって、それが破裂した傷跡だと考えても、不自然ではありません。その傷跡がフォークで刺されたように見えたのではないでしょうか」
(中略)
本誌は最初に「フォークで刺された」と診断した、なぎの木どうぶつ病院の内田正紀院長の元を訪れた。すると内田獣医師から、思わぬ答えが返ってきた。

「最初から私は『フォークで刺された』と断定はしていませんよ。皮膚病の可能性も十分あると思っていました。ただオスカーをうちに連れてきた飼い主の友人の話によると、飼い主は『オスカーが耳を掻くのも分かる』と言うほど、行動を把握しているという。そして、その飼い主が『出血の数日前に皮膚に異常はなかった』と言っていると聞いたので、刺された可能性も否定できないと答えたんです。

私の診断が発端で、これほどの騒ぎになってしまい、戸惑っているのも事実です」

「オスカー事件」がここまで広く拡散したキッカケは、飼い主の職場の同僚の家族が、義憤に駆られて送った朝日新聞への一通の投書だった。その投書にはこう書かれていた。

〈全盲の方の愛犬が、お尻をフォークのようなもので刺されました。(中略)こんなことをしたあなた。これは、いたずらでは済まされないことですよ〉
(中略)
本人の思いもよらぬ形で、全国の注目を浴びてしまった飼い主の男性とオスカー。彼らこそが、犯人がいないこの事件の「被害者」と言えるだろう。