米アリゾナ州のサファイアガラス製造工場でAppleと提携している米GT Advanced Technologiesが10月6日、連邦破産法第11条の適用を申請した。わずか数カ月前には前途洋々たる未来が開けているかのようにみえていた企業にとって、まさに驚愕の展開となっている。

 この発表を受け、GT株は90%以上急落して75セントまで値を下げ、15億ドルの時価総額のほぼ全てが吹き飛んだ。傷のつきにくいサファイアガラスがAppleの新型「iPhone」に採用されるとの期待から、7月初旬には、GTの時価総額は28億ドルを超えていた。

 「信じられないことだ。このようなことは誰も予想していなかった」と、Bright Tradingのプロップトレーダーであるデニス・ディック氏は語る。

 「これほどの衝撃は恐らく証券大手Bear Stearnsの破たん以来だ。だが当時、われわれは金融危機の只中にいた。今回は完全に寝耳に水だ」と、同氏は続ける。

 アリゾナ州に工場を新設する計画を2013年11月に発表してから、9月9日にAppleの大画面の新型iPhoneが発売されるまでの9カ月間に、GTの株価は2倍以上に上昇していた。ゴリラガラスでのCorningの成功をGTが繰り返すことになる、との期待からだ。

 新型iPhoneにGTのサファイアガラスが採用されていないことが明らかとなり、9月9日以降、GTの株価は36%下落した。GTは既に8月の段階で、「アリゾナ工場がフルに稼働するのは2015年初め以降になる」との見通しを示していた。

 「AppleとGTの関係は極めて根本的なところで壊れてしまったようだ」と、Raymond Jamesのアナリスト、パベル・モルチャノフ氏はメールで指摘している。

 GTは8月5日には、Appleがこの工場の関連費用として1億3900万ドルを支払う予定だと語っていた。Appleは8月5日までに既に総額4億3900万ドルをGTに支払っている。

 GTは当時、この工場の関連コストが同社の流動性と業績に「重大な影響」を及ぼしかねないとも警告していた。それでもGTは、通年の売上高については、2013年に計上した2億9900万ドルの2倍以上にあたる6~7億ドルと予想していた。

 空売り残高を追跡しているMarkitのデータによると、GTの発行済株式は43%が空売りされており、GT株が下落局面にあると考える投資家が大勢いたことを示しているという。

独占的な供給契約

 Appleは腕時計型端末「Apple Watch」の3つのうち2つのモデルにサファイアガラスを採用する予定だ。発売は2015年の初めとなる見通し。AppleはiPhoneのカメラカバーとタッチセンサーボタンにもサファイアガラスを使用している。

 GTが当局に提出した書類によれば、Appleとの契約では、GTがサファイアガラスを特定用途向けに販売することに関して制限が課されているという。

 GTはAppleに対し、サファイアガラス技術に関して特定用途での独占的ライセンスを供与したが、Appleにはこのサファイアガラスの購入義務はないという。

 今回、GTの子会社も破産法の適用を申請した。9月29日時点でのGTの現金残高は8500万ドルだという。6月28日時点では、同社の現金および現金同等物の保有額は3億3310万ドルだった。

 GTは過去4四半期には損失を計上しているが、8月には利益幅の上昇を理由に通期利益予想の下限を引き上げていた。

 GTは、家電、電子機器、ソーラー製品、LED製品などのメーカー向けの装置も製造している。破産申請書類によると、6月28日時点でのGTの資産総額は15億ドル、負債総額は13億ドルとなっている。

 GTはニューハンプシャー州の連邦破産裁判所に破産を申請し、再建企業向け融資による追加資金の確保を目指している。

 同社は再建に取り組む間の平常営業について裁判所の承認を求めている。

 GT株は米東部標準時午後1時30分までに1億1500万株以上が取引され、株価の過度の変動のため途中5回にわたり取引が一時停止となったが、同日、GT株はNASDAQ市場で最も取引の多い銘柄となった。

 この案件はニューハンプシャー州連邦破産裁判所で扱われている。事件番号は14-11916だ。