西洋では迎え酒のことを「犬の毛(The hair of the dog)」と呼ぶそうだ。元々は「噛みついた犬の毛(The hair of the dog that bite one)」である。これはかつて、狂犬病の犬に噛みつかれてできた傷は、その噛んだ犬の尻尾の毛を焼いて傷口に当てると治るという俗説から生まれた表現で、毒を制する毒というわけだ。

 昔から、二日酔いには「迎え酒」が効果的と言われている。前の日の晩に深酒をした場合、さらにお酒を飲めば再び酔うだけでなく、二日酔いの辛さまで消し去ってくれるというのだが、本当なのだろうか?

 じみや水分補給、鎮痛薬などで二日酔いを治している方は驚くかもしれないが、答えはどうやらイエスである。

 これにはきちんとした理由がある。多くの人々が、二日酔いは脱水症状によって引き起こされていると信じているが、実際には、お酒にごく微量に含まれるメタノールが分解されて発生するホルムアルデヒドなどが原因となって起きる症状だ。

 このメタノール中毒を治すには、さらにお酒を飲めばいい。迎え酒でエタノールを摂取することで酵素によるメタノールの分解が阻害される。結果として気分がよくなると言うわけだ。

 ただしこれは仮説に過ぎず、証明はされていない。

 別の説によれば、迎え酒によって酔っぱらうことで、二日酔いの症状が麻痺しているだけだという。

 さらに迎え酒の習慣がある人はアルコール依存症に陥る可能性が高い。

 どのアルコール飲料にも少量だが有毒なメタノールが含まれている。これは体内でホルムアルデヒドに分解されるため、高濃度で摂取した場合、失明や死の危険すらある。メタノールは広く死体の保存に利用されているもので、高濃度で使用すると生体内の酸素を奪うのだ。

 英国民保険サービスは、迎え酒をなるべく控え、空腹のときは決してアルコールを飲まないよう注意を促している。また不純物を多く含む色の濃いアルコール飲料を避け、寝る前に一杯の水を飲むことも推奨している。

 迎え酒が二日酔いを治すのはどうやら本当のようだが、迎え酒の習慣にはリスクがある。それは単に二日酔いの症状を先送りにしているだけで、それ自体が二日酔いの原因ともなりうるということだ。

 結局、最高の二日酔い対策は酒を飲まないことである。
 わかっちゃいるけどやめられない人はいるだろうが。