磁気カードの情報を抜き出し複製するスキミングによって金融機関の口座から預金を不正に引き出される被害が世界中で多発しており、年々、その手口が巧妙化しています。新たに銀行ATMに仕掛けられたカミソリのように薄いスキミング装置が発見されました。


ワシントンポスト紙の元・記者でジャーナリストのブライアン・クレブス氏が、南ヨーロッパのある銀行に取り付けられていた「カミソリのように薄い」ATMスキミング装置(ATMスキマー)の写真を公開してスキミング被害の実態を明らかにしています。


このATMスキマーはボタン電池(リチウム電池)を動力源に動いているようです。なお、ボタン電池から出る銅線の半田づけから、かなり「荒い」作りでハンドメイドなのは明らか。しかし、裏を返せば特別な装置がなくても手作りでATMスキマーが作れるということです。

なお、セキュリティ調査会社EASTによると、2013年は振り込め詐欺などの被害は前年比で5%減少したのに対して、ATMスキミングの被害は発生件数は9%、被害額は21%も増加したとのこと。


今回見つかったような極薄のATMスキマーであればATMのカード挿入口内部に取り付けることができるため、ATMの外観からスキミングの可能性を見破ることはほぼ不可能と思えます。そのため、スキミング被害を予防するために最も大切なことは磁気タイプのキャッシュカードからICチップタイプのキャッシュカードに切り替えることです。

ヨーロッパの多くの国ではスキミング防止用のEMVチップが付いたキャッシュカードを採用していますが、今回、匿名を条件にスキマーの写真を公開した南ヨーロッパの銀行のように、磁気タイプのキャッシュカードを使っている銀行もあり、また、アジアや南米だけでなくスキミング被害大国のアメリカでは磁気カードを採用する銀行も多いとのこと。

ICチップ付きカードの利用の他にATMスキミング被害を予防するために有効な方法は、暗証番号の入力作業で盗撮される場合を想定して指を上から覆うようにしてコード入力の様子を撮影させないこと、知らない土地のATMの利用を避けることだとクレブス氏はアドバイスしています。