韓国の家計負債を懸念する要因は額の多さだけではない。その中身がもっと懸念材料であるという主張がある。家計負債の内訳を見ると、住宅を担保にした融資が500兆ウォンで、自営業者への貸し出しが300兆ウォンになっている。この金額は、実際には1,400兆ウォンに上るだろうと主張する学者もいる。

韓国人の資産の内訳を見ると、不動産が資産の83.4%を占めていて、とても偏った資産構造を持っている。周知の通り、不動産は流動性が低く、もし不動産価格が下落でもするものなら、資産が目減りし、負債だけが増加し、負債の返済ができない状況も予想される。それにもう1つの危険な要因は韓国の住宅担保融資は満期一括返済型が多く、過去数年間、満期になっても返済ができず、期限延長をしてもらった比率が90%を超えている。このような現象がここ3年ほど続いているが、銀行も体力のあるうちは期限延長に応じられるが、家計よりプロジェクトファイナンスの方に力を入れていた銀行はプロジェクトが破綻し、回収できない大型案件をたくさん抱えている。さらに、BIS規制などにより銀行もそろそろ限界に達しつつあり、2015年度には銀行が期限延長に応じず、その結果負債の返済ができない債務者の住宅が競売にかけられる事態が起こる可能性があることが指摘されている。

また、銀行が融資をする際の限度であるLTVというのがある。LTVとは、担保価値に対して最大どれくらいまで貸し出すかの比率である。現在銀行でのこの比率は50%であるが、これを70%に引き上げて負債に苦しんでいる人を助けようという政府の政策も議論された。これは、一時的に危機を回避できる道になるかもしれないが、問題を先送りし、もっと悲惨な結果をもたらすとして反対する専門家も多い。
  韓国の家計負債が懸念されるもう1つの要因は、韓国の特殊な経済事情によるものである。韓国経済の特徴は自営業者の割合が高い。再就職が難しくなった場合、自営業しか選択肢がないので、どうしても自営業者が増えて続ける社会構造になっている。ところが、最近60歳から65歳のベビーブーマーがリタイアを迎えていて、2回にわたって1,300万人くらいの引退者がこれから発生する。自営業者が増えて行くのは間違いない。

自営業者が増えていくというのは供給需要の法則により、競争が激しくなることを意味し、景気が悪化し、消費は低迷するなかで自営業者だけが増えていき、激しい競争の結果、店を出しても2~3年で潰れることが多い。潰れずに自営業をやっていても、問題は個人事業者395万名のなかで56%に該当する221万名の可処分所得が月100万ウォンにも満たないという事実である。統計によると自営業者の1人当たりの平均負債額は1億2,000万ウォンで給与所得者の4,000万円に比べて高いし、収入に比べて借金がどれほど多いのかは明らかだ。このような赤字の自営業者は生計を立てるために返済どころか負債を増やしている実態が浮き彫りになっている。