中国でスマートフォンの普及に伴い、同国のインターネット大手テンセントが提供するメッセージアプリ 「ウィーチャット(中国名『微信』)」の利用者が増えている。対照的に、政府が統制を強化している中国版ツイッターの「新浪微博」は人気に陰りが出ているようだ。

微信で人気があるのが、名刺代わりのQRコードをスマートフォンで読み取って相手の連絡先に登録できる機能。まだ完全に紙の名刺に取って替わる存在にはなっていないものの、多くのユーザーがQRコードを持つようになった。


中国ではかつて、新浪微博が活発な意見交換の場となっていたが、中国政府がネット監視を強める中で、ユーザー離れが起きている。それに比べると微信はプライバシーが守られやすく、機能も幅広いことから支持が広がった。


上海に住むプロジェクトマネジャー、イェ・ジュンさん(26)は昨年5月にiPhoneを買い替えてから微信を使い始めた。友人のほとんどは微信を使っていたが、イェさんはまだ新浪微博の方が好きだったという。


その気持ちが変わったのは11月。友人の結婚式の花束の写真を自分の微信に投稿したところ、「友人たちがすぐにコメントしてくれて楽しかった。ほとんどの人が実質的に捨ててしまった新浪微博よりも、微信の方が優れていて効率的な交流ツールだと気付いた」という。


微信は2011年に提供が開始され、1年3カ月で登録ユーザーは1億人に到達した。その背景には8億人を超すユーザー向けに同アプリを宣伝できるテンセントの強みがある。


モバイル決済やネット通販、ゲーム、商品宣伝用アカウント、タクシー呼び出し、投資などの新機能も次々に打ち出した。春節のお年玉に当たるデジタル版の「紅包」は、2000万枚も交換された。

微信の実質ユーザーは昨年9月の時点で月間2億7190万人となり、前年より124%増えた。


一方で新浪微博は、2011年に温州市で起きた列車追突事故で政府の対応を批判する投稿が相次いだことをきっかけに、翌年から政府が統制を強化。実名でのアカウント登録が義務付けられ、「うわさ」を投稿した場合はアカウントが停止されるようになった。


中国当局の統計によれば、新浪微博を含む短文投稿サイトのユーザー数は昨年だけで2780万人以上減った。


ただ、新浪は微博を分社化してニューヨーク証券取引所に上場予定と伝えられる中で、ユーザー数は減っていないと強調している。


米交流サイトのフェイスブックはこのほど、微信と競合するメッセージアプリ「ワッツアップ」の買収を発表した。微信も今後の国際進出を巡り、テンセントの動向が注目されそうだ。