チンパンジーとボノボが霊長類の中でも近縁であるように、かつて人類にもいくつか近縁種が存在したことをご存知だろうか? 約3万年前に絶滅してしまったネアンデルタール人やデニソワ人は、まさにホモ・サピエンスの兄弟。異種交配も可能だといわれているヒト属の別種であり、アフリカ大陸に住むネグロイド以外の現代人類には、1~4%の先史人類の遺伝子が残されているという研究もあるほどなのだ。

かつて、ネアンデルタール人とデニソワ人を襲ったレトロウィルスに注目した研究がある。その爪跡は先史人類の「ジャンクDNA」と呼ばれる一見何に役だっているのかわからない未解明の領域に見ることができ、研究者らはその14箇所にレトロウイルスの感染の証拠を発見することが出来たという。しかしそれらの痕跡は、ヒトの被験者のDNAの中に見られなかったことから、当時のホモ・サピエンスには感染しなかったとされていた。

今回の研究では、とあるグループの遺伝子解析の結果を注意深く調査した所、現代人のDNAにも14の同レトロウイルスの痕跡のうちの7つが確認された。驚くべきことは、この被験者グループは癌患者であり、このジャンクDNAをもつ67人もまた癌を発症していたということだ(ただし癌患者の全てにこのジャンクDNAが存在するわけではない)。そのため、約40万年前というこのレトロウイルスの感染時期において、2つの説が浮上している。ヒト属の各種に分岐する直前の共通の祖先が、このウィルスに感染し、分岐後もそれぞれの種のDNAに残ったという説がひとつ。そしてもうひとつは、ホモ・サピエンスとネアンデルタール人、デニソワ人の異種交配により、一部の現代人にウィルスの感染の痕跡が受け継がれたという説だ。

いずれにせよ、この研究結果は、太古のレトロウイルスの痕跡を表すジャンクDNAが、癌のリスクを高める可能性を示唆している。研究者らは、今後このジャンクDNAを持つ人達と、彼らの健康状態の関連性について調査する予定だ。なお、この研究結果は『Current Biology』に掲載されている。
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