米アマゾン・ドット・コムは2012年10月24日、日本市場で電子書籍端末「Kindle(キンドル)」を発売すると発表した。アマゾンが発売する端末はイーインクを採用した電子書籍専用端末「Kindle Paperwhite」、電子書籍に加えてアプリやゲーム、音楽なども楽しめるタブレット端末「Kindle Fire」の2種類。同日より予約受付を開始した。

 10月25日には、電子書籍販売ストア「Kindleストア」もオープン。角川グループパブリッシング、幻冬舎、講談社、小学館、新潮社、文藝春秋などの出版社が参画し、日本語の書籍で5万を超すタイトルを販売する。英語の書籍など海外書籍を含めると140万タイトルに及ぶ。日本ではソニー、楽天が電子書籍市場で覇権争いを展開しているが、本命であるアマゾンの参入で業界図は様変わりしそうだ。

 アマゾンが投入する「Kindle Paperwhite(キンドルペーパーホワイト)」はバックライト付きの電子書籍専用端末。暗い場所でも読める点が受け、米国では品不足が起きている。日本で投入するモデルは2種類で、Wi-Fi専用モデルは8480円、NTTドコモの3G回線を無料で利用できるWi-Fi+3Gモデルは1万2980円で販売する。出荷日は11月19日を予定している。


 タブレット端末「Kindle Fire」は大きく2種類のモデルを投入する。Kindle Fire、および高精細ディスプレイを搭載したKindle Fire HDだ。いずれも7インチモデルで、価格はKindle Fireは1万2800円、Kindle Fire HDは16GBモデルが1万5800円、32GBモデルは1万9800円となっている。

 今回、日本で登場するのはいずれも9月6日にアマゾンが米ロサンゼルスで発表した新製品だが、米国で発表した8.9インチモデルの投入は見送る。米アマゾンのKindleデバイス事業部バイスプレジデントのデーヴ・リンプ氏は「米国でも(8.9インチモデルは)まだ出荷していない。原則として米国で販売するものは日本でも今後販売していく」としており、近いうちに市場に投入する可能性が高い。

一方、品薄状態が続くとされるKindle Paperwhiteについて、米アマゾンのKindleコンテンツ事業部バイスプレジデントのラス・グランディネッティ氏は「確かに米国では生産が追いついていない。嬉しい悲鳴を上げている状態だ。増産に向け努力している。日本の顧客需要は現時点で見えないが、(ある程度の需要に応えられるよう)大量に用意している」と語る。


キンドルに死角は?

 幾度となく日本市場参入が伝えられてきた米アマゾンだが、その度に話題に上ったのが出版社との契約問題だった。今回、「ほかのどの電子書籍ストアよりも最新ベストセラーが多い」(アマゾン ジャパンの友田雄介Kindleコンテンツ事業部長)と強調するように、大手出版社各社との間で一定の合意に至ったもようだ。

 「(電子書籍という)新しい領域で出版社と関係を築くのに時間がかかったのは事実だが、お互いに前向きに取り組んできて本日に至った」(米アマゾンのリンプ氏)。電子書籍市場ではパイオニアであり、デバイス開発でも一日の長があるアマゾンだけに、日本の大手出版社との関係構築によって品ぞろえが増えれば、国内市場で先行するソニーと楽天の追撃態勢が整う。

 しかし、キンドルにも懸念点は残る。電子書籍以外のコンテンツだ。Kindle Fire、およびKindle Fire HDはカラー液晶を搭載したタブレット端末で、競合するのは米アップルが日本時間10月24日未明に発表したばかりの「iPad mini」や米グーグルの「Nexus 7」。電子書籍だけでなく、音楽、動画、ゲーム、アプリなどクラウドサービスを介して提供されるコンテンツの総合力で消費者から比較される。

 「音楽に関しては米アップルよりも多い2000万曲を用意している」(米アマゾンのグランディネッティ氏)と強調するが、アプリの品ぞろえに関しては既に数十万種類という巨大な市場を形成しているアップルやグーグルに比べ、5万超というアマゾンが見劣りするのは否めない。

 同社は日本では10月4日より、アプリ開発者を対象に、アプリ配信ストア「Amazon Appstore(アマゾン アップストア)」への登録受け付けを先行開始。「12月の出荷までの時間を使って、音楽やゲームといった様々なアプリを取りそろえていきたい」(グランディネッティ氏)とアプリ配信市場形成に意欲を見せる。今後、どれだけ電子書籍以外のコンテンツも集められるかによって、Kindle Fireの売れ行きが変わりそうだ。
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