2012年6月に米国を訪問したインドのマンモハン・シン首相は、米政府と自由貿易合意を目指すための投資協定などについて話し合った。
実はその裏で、別の交渉も行われていた。偽札対策だ。インド側は、米政府に偽札対策における協力を求め、2国間の協定に署名を求めた。というのも、インドでは偽札の蔓延が大きな問題になっており、さらに偽札がインドに対するテロ行為の資金源にもなっていると懸念しているからだ。
●偽インドルピー、前年の400%増
世界の基軸通貨である米ドルは、言うまでもなく世界中で最も信用され広く普及する通貨だ。米ドルは長く偽造の対象となり、世界で莫大な量の偽造米ドルが流通しているとも言われている。
そこで米国は偽造対策として、例えば100ドル札では3D技術などを盛り込んだ新しい紙幣の交付を発表した。巧妙な仕様ゆえに印刷などで技術的な困難さが求められ、発行は今も延期されている状態だが、米連邦準備制度理事会(FRB)はできる限り早急に新紙幣を発行したいとしている。
世界的に広く流通する通貨で偽札の標的になるのは何も米ドルだけではない。世界最大の民主主義国家で12億人という人口を抱えるインドも、ルピーの偽札に頭を痛めている。
シン首相が米政府に泣きつくのも無理はない。偽札製造の技術が高まっており、インド財務省によれば銀行取引で発見された偽札の数は前年の400%増だった。またパキスタンから輸入されてきた織物のトラックから、一度に50万ドル(約3960万円)相当の偽札が発見されたケースもあった。
●フランスで約9億円相当の偽造ユーロが発覚
米ドルやインドルピー以外で使用率が高い通貨の代表格は、ユーロだ。債務危機で経済的混乱の続くギリシャでは2012年6月末に、2000ユーロ(約19万6000円)相当の偽ユーロコインとその製造器具が押収されたばかりだ。
またフランスでは最近、大規模な偽札製造グループが摘発されて大きな話題になった。フランス当局は2012年6月半ば、2度にわたり首都パリの東に位置するシェルとモーの間にある村のアジトを捜索した。偽の壁の向こうに偽札の「印刷所」が発見された。
フランスはユーロ圏でも最も偽札事件が多い国として知られ、年間30~40件の偽造事件が摘発されている。今回摘発された偽札偽造組織はフランス史上最大級で、これまで900万ユーロ(約8億8000万円)以上の偽札が偽造されたという。しかも偽札の90%はすでにフランス国内で流通しており、残りの10%は国外に流れていた。
フランス当局は数カ月にわたりこの組織のリーダーを逮捕するための捜査を行っていた。そして先月に偽造通貨の罪で前科のある50代のリーダーの男を逮捕するに至ったのだ。
また、ユーロの偽造において、特にイタリア人は巧妙な偽札を作っている。イタリア南部、ナポリ近郊は同国の偽造紙幣の伝統的な「中心地」で、毎年回収される偽ユーロ通貨の半数近くがこの地域で製造されているとの話もあるくらいだ。芸術に造形が深く、職人が多い国だけあって、巧みな技を身につけた偽札職人たちが数多くいるという。
これだけ世界で様々な偽造通貨が出回っていることを考えれば、海外旅行が好きな日本人も知らぬ間に偽札を手にしてしまうことだってあるだろう。ユーロだけをみても、毎年回収される偽札は60万枚に近い。
20ユーロ札や50ユーロ札の偽造が多いが、現在流通しているユーロ紙幣が約1400万枚であることを考えると、単純計算でも知らぬ間にユーロの偽札が財布に紛れ込む可能性は5%近くになる。
なお、すでにユーロ圏外にも拡散している偽ユーロ紙幣もあるので、ブルガリア、コロンビア、ロシア、トルコ、イラン、イラクといった国でも注意が必要だ。
偽札事件はそれこそ世界中で発生しており、日本でもちょこちょこ発生している。複写やプリントの技術が進歩する中で、手軽に偽札を作ってみようと考える輩が増えるのもしかたがないということか。
最近では、偽造されにくいポリマー製のプラスチック紙幣を発行している国が増えている。現在、世界20カ国以上で採用されており、これこそが現実的な偽札対策だと言う専門家も少なくない。オーストラリアやニュージーランド、シンガポール(一部)などで導入されている。
そして2011年11月には、カナダがこのプラスチック紙幣の導入を発表した。まずは100カナダドル紙幣(約7800円)を発行し、徐々にほかの紙幣もプラスチック紙幣に替えていく予定だ。偽札対策にも効果を発揮すると期待されている。
そもそも米国大統領を護衛する機関として有名なシークレットサービスは、1865年に偽札を食い止めるために作られた組織だった。南北戦争が終結した当時から始められた偽札対策だが、もう何百年も世界中でイタチゴッコが続いている。
お金がある限り偽札がなくなることはない。しかも偽札とは分からないレベルの紙幣が流通している以上、私たちもいつそれを手にするかは分からないし、対策の術もない。
●もしも偽札を日本に持ち込んでしまったら?
間もなく夏休みシーズンになるが、この不況にも関わらず、日本人の海外旅行者数は増加する見込みだという。仮に知らぬ間に偽札を手に入れてしまったとしたら、現地では速やかに警察や銀行などに届け出するべきだ。ただそれも、偽札だと気が付けばの話。そもそも巧妙すぎて気が付かない場合がほとんどだろう。
何も知らずにそのまま日本に持ち帰ってしまった場合はどうなるのか? 日本でドルやユーロを使う機会はまずないから気が付かないままに放置される。
問題になるのは、日本で円に換金しようとして偽物であることが判明した場合だ。銀行では偽札であることはすぐに判明するので、その時点で警察に相談することになるが、よほどのことがない場合は、そのまま逮捕されてしまうことはないと警察関係者は言う。
当たり前だが、偽札だと知りつつ使うことはないように。その場合、犯罪者として逮捕されてしまうことになりかねないからだ。

実はその裏で、別の交渉も行われていた。偽札対策だ。インド側は、米政府に偽札対策における協力を求め、2国間の協定に署名を求めた。というのも、インドでは偽札の蔓延が大きな問題になっており、さらに偽札がインドに対するテロ行為の資金源にもなっていると懸念しているからだ。
●偽インドルピー、前年の400%増
世界の基軸通貨である米ドルは、言うまでもなく世界中で最も信用され広く普及する通貨だ。米ドルは長く偽造の対象となり、世界で莫大な量の偽造米ドルが流通しているとも言われている。
そこで米国は偽造対策として、例えば100ドル札では3D技術などを盛り込んだ新しい紙幣の交付を発表した。巧妙な仕様ゆえに印刷などで技術的な困難さが求められ、発行は今も延期されている状態だが、米連邦準備制度理事会(FRB)はできる限り早急に新紙幣を発行したいとしている。
世界的に広く流通する通貨で偽札の標的になるのは何も米ドルだけではない。世界最大の民主主義国家で12億人という人口を抱えるインドも、ルピーの偽札に頭を痛めている。
シン首相が米政府に泣きつくのも無理はない。偽札製造の技術が高まっており、インド財務省によれば銀行取引で発見された偽札の数は前年の400%増だった。またパキスタンから輸入されてきた織物のトラックから、一度に50万ドル(約3960万円)相当の偽札が発見されたケースもあった。
●フランスで約9億円相当の偽造ユーロが発覚
米ドルやインドルピー以外で使用率が高い通貨の代表格は、ユーロだ。債務危機で経済的混乱の続くギリシャでは2012年6月末に、2000ユーロ(約19万6000円)相当の偽ユーロコインとその製造器具が押収されたばかりだ。
またフランスでは最近、大規模な偽札製造グループが摘発されて大きな話題になった。フランス当局は2012年6月半ば、2度にわたり首都パリの東に位置するシェルとモーの間にある村のアジトを捜索した。偽の壁の向こうに偽札の「印刷所」が発見された。
フランスはユーロ圏でも最も偽札事件が多い国として知られ、年間30~40件の偽造事件が摘発されている。今回摘発された偽札偽造組織はフランス史上最大級で、これまで900万ユーロ(約8億8000万円)以上の偽札が偽造されたという。しかも偽札の90%はすでにフランス国内で流通しており、残りの10%は国外に流れていた。
フランス当局は数カ月にわたりこの組織のリーダーを逮捕するための捜査を行っていた。そして先月に偽造通貨の罪で前科のある50代のリーダーの男を逮捕するに至ったのだ。
また、ユーロの偽造において、特にイタリア人は巧妙な偽札を作っている。イタリア南部、ナポリ近郊は同国の偽造紙幣の伝統的な「中心地」で、毎年回収される偽ユーロ通貨の半数近くがこの地域で製造されているとの話もあるくらいだ。芸術に造形が深く、職人が多い国だけあって、巧みな技を身につけた偽札職人たちが数多くいるという。
これだけ世界で様々な偽造通貨が出回っていることを考えれば、海外旅行が好きな日本人も知らぬ間に偽札を手にしてしまうことだってあるだろう。ユーロだけをみても、毎年回収される偽札は60万枚に近い。
20ユーロ札や50ユーロ札の偽造が多いが、現在流通しているユーロ紙幣が約1400万枚であることを考えると、単純計算でも知らぬ間にユーロの偽札が財布に紛れ込む可能性は5%近くになる。
なお、すでにユーロ圏外にも拡散している偽ユーロ紙幣もあるので、ブルガリア、コロンビア、ロシア、トルコ、イラン、イラクといった国でも注意が必要だ。
偽札事件はそれこそ世界中で発生しており、日本でもちょこちょこ発生している。複写やプリントの技術が進歩する中で、手軽に偽札を作ってみようと考える輩が増えるのもしかたがないということか。
最近では、偽造されにくいポリマー製のプラスチック紙幣を発行している国が増えている。現在、世界20カ国以上で採用されており、これこそが現実的な偽札対策だと言う専門家も少なくない。オーストラリアやニュージーランド、シンガポール(一部)などで導入されている。
そして2011年11月には、カナダがこのプラスチック紙幣の導入を発表した。まずは100カナダドル紙幣(約7800円)を発行し、徐々にほかの紙幣もプラスチック紙幣に替えていく予定だ。偽札対策にも効果を発揮すると期待されている。
そもそも米国大統領を護衛する機関として有名なシークレットサービスは、1865年に偽札を食い止めるために作られた組織だった。南北戦争が終結した当時から始められた偽札対策だが、もう何百年も世界中でイタチゴッコが続いている。
お金がある限り偽札がなくなることはない。しかも偽札とは分からないレベルの紙幣が流通している以上、私たちもいつそれを手にするかは分からないし、対策の術もない。
●もしも偽札を日本に持ち込んでしまったら?
間もなく夏休みシーズンになるが、この不況にも関わらず、日本人の海外旅行者数は増加する見込みだという。仮に知らぬ間に偽札を手に入れてしまったとしたら、現地では速やかに警察や銀行などに届け出するべきだ。ただそれも、偽札だと気が付けばの話。そもそも巧妙すぎて気が付かない場合がほとんどだろう。
何も知らずにそのまま日本に持ち帰ってしまった場合はどうなるのか? 日本でドルやユーロを使う機会はまずないから気が付かないままに放置される。
問題になるのは、日本で円に換金しようとして偽物であることが判明した場合だ。銀行では偽札であることはすぐに判明するので、その時点で警察に相談することになるが、よほどのことがない場合は、そのまま逮捕されてしまうことはないと警察関係者は言う。
当たり前だが、偽札だと知りつつ使うことはないように。その場合、犯罪者として逮捕されてしまうことになりかねないからだ。
