預金者が亡くなると、その人の口座からお金をおろせなくなる、という話をよく聞く。

僕も昨年、母親が亡くなった際、葬儀社の人間に、同じことを言われた。死亡届を出した即日とは限らないが、数日のうちに口座が凍結されておろせなくなるから、早めにおろしておいた方がよいと。

なので、慌てておろしに行った。幸い大半の口座は、キャッシュカードでおろせる一日の限度額の範囲内だったので、暗証番号さえわかっていればなんとかなった。

問題はゆうちょ銀行で、ここだけは金額が多く、カードでおろしていると数日かかってしまう。仕方なく、通帳と印鑑を持って、窓口に行った。今から思えば、この時、僕が行ったのが失敗だった。母親名義の通帳だったので、僕の口座でないことがわかってしまい、問い詰められ、うっかり「亡くなった母の口座で」と言ってしまったのだ。

その瞬間の、窓口の男の豹変ぶりは忘れられない。

「それは相続になるのでおろせません」

それまで笑顔だったのに、突然、そんなことも知らないのか、という顔をしやがった。ゆうちょ銀行の、民営化の皮をかぶった本質を垣間見た気がした。

それはさておき。あれから半年以上経って、ふと気になったのだ。

もしあの時、僕がうっかり口を滑らし、母親が亡くなったと言っていなかったら、どうなっていたのだろうか、と。

そもそも預金者が亡くなると、口座が凍結されるというが、銀行はどうやって預金者が亡くなったことを知るのだろうか。

役所が連絡するということは、常識的に考えてありえない。銀行が問い合わせるのか。それも不可能だろう。じゃあ、何か別の方法があるのだろうか。


そこで三菱東京UFJ銀行コールセンターに直接聞いてみた。


「亡くなった人の口座からは預金がおろせなくなるってよく聞きますけど、銀行はどうやってその人が亡くなったかどうかわかるんですか」


担当者 銀行としてはですね、特に自動的に凍結されるようなことはございませんでして、お口座に関わる相続の手続きをとるという方法をまずしていただくんですが、特にそういった手続きがなければ自動的に止まるということはございません。


ーー例えば役所から銀行さんに話が行くということではないわけですよね?

担当者 自動的に来るようなことはございません。


ーー逆に、銀行さんからお役所の方に聞くっていうことはあるんですか?

担当者 いえ、そういったことはないと思いますが。


ーーじゃあ、基本的に自動的におろせなくなるっていうことはないんですかね?

担当者 基本的にはございません。


話が違うじゃないないか。

念のため、みずほ銀行とりそな銀行にも聞いてみたが、答えは同じだった。預金者が亡くなると、口座が凍結されておろせなくなるという話は嘘。単なる都市伝説だったのだ。

しかし、なんでそんな話がまことしやかに言われるようになったのか。僕は、銀行が自分たちで流したんじゃないかと思う。相続の手続きをせずにお金をおろされ、後で銀行に遺族たちの揉め事が持ち込まれるのを避けるために。


 結論。


亡くなっても、その人の口座は凍結されません。だから、慌てておろすのではなく、お葬式など済ませてから、ゆっくりおろしましょう。ただし、窓口でおろす時は、故人と同じ性別の人がおろしに行くように。



ビッグパンダの日記