国内外の家電各社が自動運転で家庭内の床をきれいにする「ロボット掃除機」を相次ぎ投入している。米アイロボットの「ルンバ」が開拓した同分野には東芝、韓国LG電子の日本法人などが参入しており、8日にはシャープが吸引力を高め音声認識機能などを搭載した上位機種を発表した。家庭普及率がほぼ100%の掃除機市場にあって通常の機種より価格は割高だが、掃除機本来の「ゴミ取り性能」に加え、「便利さ」「楽しさ」「静音性」などを売り物に各社が販売拡大を競っている。
シャープは6月上旬に吸引力を高め収集したゴミの捨てやすさなどに配慮したロボット掃除機を発売する。「COCOROBO(ココロボ)」の愛称で、上位機種には人の声で操作を指示する音声認識機能や、内蔵カメラで室内を撮影し遠隔地のスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)から掃除の状況を確認できる機能などを搭載。他社の既存製品との差異化を図り、2013年3月期に10万台、台数ベースで国内シェア3割の販売を目指す。
上位モデルは13万円前後(予想実売価格)、掃除機能に特化した低価格モデルは9万円前後(同)。
■圧倒的シェアの「ルンバ」に挑む各社
ロボット掃除機は通常の掃除機より製品単価が高いが、家事の負担を減らせる点などが魅力となって徐々に市場が広がっている。シャープの調べによると、同掃除機の国内市場は11年度に18万台で、12年度には25万台に拡大するとみている。現在は米ロボット専業ベンチャー、アイロボット社の「ルンバ」が圧倒的なシェアを持つ。日本参入も02年と古く、04年からはセールス・オンデマンド(東京・新宿)が国内代理店となり販売している。
ロボット掃除機は長らくルンバの独壇場だったが、ここ1年ほどはルンバに挑む新規参入組が増えている。11年9月にはバンダイ子会社のシー・シー・ピーが「ラクリート」を発売。上位モデルでも2万5千円程度(実売)と手ごろな価格で人気を集めている。
2011年10月には東芝子会社の東芝ホームアプライアンスが、韓国サムスン電子からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける形で「Smarbo(スマーボ)」を発売した。
本体に多数のセンサーやカメラを搭載して掃除する経路を最適化したり、作動中に家具や壁面などに衝突することで家財を損傷することがないような機能を持たせた。韓国LG電子も12年3月に日本市場に参入している。
シャープが今回投入する製品は、一見して実売価格の高さが気になる。低価格モデルでもルンバの最上位モデルより2万5千円以上高く、上位機になるとルンバの2倍以上する。
■吸引力、衝突回避……「日本のユーザーを考えて作った」機能満載
それでもシャープは「当社が参入することで市場が活性化し、12年度のロボット掃除機市場は35万台、うち10万台をココロボが獲得する」(ランドリーシステム事業部長の阪本実雄氏)と強気な見通しを披露する。
自信の背景にあるのは、日本のユーザー向けに作り込んだきめ細かい機能だ。左右にある「サイドブラシ」で部屋の隅にあるゴミをかき出し、中央にあるバー状の「回転ブラシ」で内部に取り込むという基本構造は他社製品とほぼ同じだが、吸引用のモーターとファンの機構を工夫し、ゴミの吸引力を競合他社より大幅に高めたという。
掃除機の能力の指標である「吸い込み仕事率」など具体的な数字は明らかにしていないが、吸引力ではルンバの2倍以上とみられる。
一般にロボット掃除機では、ある程度のゴミの取り残しが発生すると指摘されているが、シャープはこうしたゴミの取り残しをできるだけ減らすことで、ユーザーの支持を得たい考えだ。
このほか、(1)ダストボックスにたまったゴミを捨てる際、ゴミに触れずに済む(2)ダストボックスを丸ごと水洗いできる(3)超音波センサーを搭載し、窓ガラスなど透明なものを含め、作動中に障害物に衝突するのを防げる(4)排気フィルターを備え微細なゴミが室内に舞い上がるのを防げる(5)プラズマクラスターイオンの発生機を内蔵し、清掃中や待機中に室内にイオンを放散できる――といった機構も搭載した。
従来のロボット掃除機では、ユーザーの間から「ゴミを捨てるときに機械を触るのが嫌」「作動中にゴミを舞い上げている」といった不満があったため、これらのマイナス点を解消したという。
■アジア展開も視野に「英語」「中国語」の認識機能も
こうした基本的な掃除機能に加え、上位機種では“ロボットらしさ”も実現させた。
例えば掃除を始める際、ユーザーがココロボに向かって「きれいにして」と話すと、その声を認識して「ワカッタ」と返答。さらにペットが飼い主を見て喜ぶように、本体を左右にクルクルと振ってアピールするしぐさも見せる。
家庭の無線LANルーターにココロボを登録すると、(1)留守中の自宅の様子を、ココロボが1回転しながら4枚撮影しスマートフォンに送信する(2)スマートフォンからの指示で「おつかれさま」「愛してる」などの定型メッセージを遠隔でココロボにしゃべらせる――といったことも可能になる。
ロボットのマニア層や高齢者などに親しみやすくしたほか、自宅にいるペットの様子を確認したいというユーザーのニーズをくみ取ったものだ。さらに同社では海外市場への展開もにらんでいる。
アジアの富裕層をターゲットに「早い時期に中国と東南アジアでもココロボを発売する」(阪本事業部長)計画。日本と同程度の価格で販売し、“見せびらかせる家電”として市場開拓を進める。
こうした海外展開を見越して、上位機種では音声認識・合成の機能を日本語だけでなく英語と中国語にも対応済み。中国・東南アジアと同様に白物家電を販売している中近東への展開も検討している。
8日に開かれた製品発表の記者会見では、本体価格の高さを懸念する声も出たが、阪本事業部長は「高くてもこの価格でも受け入れられると見ている。1年たてば結果はおのずと出てくるので、見ていてほしい」と自信を示している。

シャープは6月上旬に吸引力を高め収集したゴミの捨てやすさなどに配慮したロボット掃除機を発売する。「COCOROBO(ココロボ)」の愛称で、上位機種には人の声で操作を指示する音声認識機能や、内蔵カメラで室内を撮影し遠隔地のスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)から掃除の状況を確認できる機能などを搭載。他社の既存製品との差異化を図り、2013年3月期に10万台、台数ベースで国内シェア3割の販売を目指す。
上位モデルは13万円前後(予想実売価格)、掃除機能に特化した低価格モデルは9万円前後(同)。
■圧倒的シェアの「ルンバ」に挑む各社
ロボット掃除機は通常の掃除機より製品単価が高いが、家事の負担を減らせる点などが魅力となって徐々に市場が広がっている。シャープの調べによると、同掃除機の国内市場は11年度に18万台で、12年度には25万台に拡大するとみている。現在は米ロボット専業ベンチャー、アイロボット社の「ルンバ」が圧倒的なシェアを持つ。日本参入も02年と古く、04年からはセールス・オンデマンド(東京・新宿)が国内代理店となり販売している。
ロボット掃除機は長らくルンバの独壇場だったが、ここ1年ほどはルンバに挑む新規参入組が増えている。11年9月にはバンダイ子会社のシー・シー・ピーが「ラクリート」を発売。上位モデルでも2万5千円程度(実売)と手ごろな価格で人気を集めている。
2011年10月には東芝子会社の東芝ホームアプライアンスが、韓国サムスン電子からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受ける形で「Smarbo(スマーボ)」を発売した。
本体に多数のセンサーやカメラを搭載して掃除する経路を最適化したり、作動中に家具や壁面などに衝突することで家財を損傷することがないような機能を持たせた。韓国LG電子も12年3月に日本市場に参入している。
シャープが今回投入する製品は、一見して実売価格の高さが気になる。低価格モデルでもルンバの最上位モデルより2万5千円以上高く、上位機になるとルンバの2倍以上する。
■吸引力、衝突回避……「日本のユーザーを考えて作った」機能満載
それでもシャープは「当社が参入することで市場が活性化し、12年度のロボット掃除機市場は35万台、うち10万台をココロボが獲得する」(ランドリーシステム事業部長の阪本実雄氏)と強気な見通しを披露する。
自信の背景にあるのは、日本のユーザー向けに作り込んだきめ細かい機能だ。左右にある「サイドブラシ」で部屋の隅にあるゴミをかき出し、中央にあるバー状の「回転ブラシ」で内部に取り込むという基本構造は他社製品とほぼ同じだが、吸引用のモーターとファンの機構を工夫し、ゴミの吸引力を競合他社より大幅に高めたという。
掃除機の能力の指標である「吸い込み仕事率」など具体的な数字は明らかにしていないが、吸引力ではルンバの2倍以上とみられる。
一般にロボット掃除機では、ある程度のゴミの取り残しが発生すると指摘されているが、シャープはこうしたゴミの取り残しをできるだけ減らすことで、ユーザーの支持を得たい考えだ。
このほか、(1)ダストボックスにたまったゴミを捨てる際、ゴミに触れずに済む(2)ダストボックスを丸ごと水洗いできる(3)超音波センサーを搭載し、窓ガラスなど透明なものを含め、作動中に障害物に衝突するのを防げる(4)排気フィルターを備え微細なゴミが室内に舞い上がるのを防げる(5)プラズマクラスターイオンの発生機を内蔵し、清掃中や待機中に室内にイオンを放散できる――といった機構も搭載した。
従来のロボット掃除機では、ユーザーの間から「ゴミを捨てるときに機械を触るのが嫌」「作動中にゴミを舞い上げている」といった不満があったため、これらのマイナス点を解消したという。
■アジア展開も視野に「英語」「中国語」の認識機能も
こうした基本的な掃除機能に加え、上位機種では“ロボットらしさ”も実現させた。
例えば掃除を始める際、ユーザーがココロボに向かって「きれいにして」と話すと、その声を認識して「ワカッタ」と返答。さらにペットが飼い主を見て喜ぶように、本体を左右にクルクルと振ってアピールするしぐさも見せる。
家庭の無線LANルーターにココロボを登録すると、(1)留守中の自宅の様子を、ココロボが1回転しながら4枚撮影しスマートフォンに送信する(2)スマートフォンからの指示で「おつかれさま」「愛してる」などの定型メッセージを遠隔でココロボにしゃべらせる――といったことも可能になる。
ロボットのマニア層や高齢者などに親しみやすくしたほか、自宅にいるペットの様子を確認したいというユーザーのニーズをくみ取ったものだ。さらに同社では海外市場への展開もにらんでいる。
アジアの富裕層をターゲットに「早い時期に中国と東南アジアでもココロボを発売する」(阪本事業部長)計画。日本と同程度の価格で販売し、“見せびらかせる家電”として市場開拓を進める。
こうした海外展開を見越して、上位機種では音声認識・合成の機能を日本語だけでなく英語と中国語にも対応済み。中国・東南アジアと同様に白物家電を販売している中近東への展開も検討している。
8日に開かれた製品発表の記者会見では、本体価格の高さを懸念する声も出たが、阪本事業部長は「高くてもこの価格でも受け入れられると見ている。1年たてば結果はおのずと出てくるので、見ていてほしい」と自信を示している。
