1メートル92、88キロ。

 中学生、いや日本中を探しても滅多にいない、この体格の持ち主がTehu氏(15)である。東大合格者数で毎年1、2を争う灘中学に通う、この神戸市在住の3年生が、米アップル社の携帯端末「iPhone(アイフォーン)」のアプリで、35万ダウンロードを記録した。そして無料総合3位、医療1位に輝いた。

 アプリケーション(アプリ)とは端末上で動かすソフトのことを指す。米アップル社の新型携帯端末「iPhone(アイフォーン)」はハード同様にアプリも人気化しており、すでにビジネスとして多くの個人と法人が参入し、競争環境は激しい。しかし、そこで中学生が1位を取ったということは紛れもない事実だった。

 tehu氏が開発したアプリのタイトルは「健康計算機」。誕生のきっかけは、まさに自分自身の体格。「健康計算機はもともと自分の体型に悩みがあったことから作り出されました」と話す。

 アプリは無料ながら、広告収入で月間8万円ほどが入るがすべて寄付。さらに将来は、米シリコンバレーに多くの優秀な人材を輩出したスタンフォード大学への進学を希望し、起業を目指すというスケールの大きな夢を抱く。

本題のアプリ開発とはまったく関係がないものの、全国でも屈指の学力を持つ児童が集う阪神エリアにおいて、さらに超難関の灘中学に、どのようにして受かったのか、少し興味をそそられた。あくまでもついでだが、まずは最初に聞いてみた。

 「過去問じゃないですかね。素質さえあれば過去問20年分を3回やれば受かりますよ。自分は勉強自体、3歳の時から公文式でやっていました。受験に直結する勉強は4年生の時から、とある大手塾でやっていました」

 いとも簡単に答えたtehu氏。では灘中学の受験問題の傾向をどのように見ているのだろうか。個人的な見解として、分析してもらった。

 「数学については、発想力(ひらめき)がとても大事。中学校以降の数学とは異なり、受験算数は、作業は必要ないんです。思いつきさえあればいけます。灘は最高レベルの思いつきが要求されますね。あと、国語は知識が大事かも。理科は計算力が結果を左右します」

 ちなみに入学後の成績は優秀で、今年1学期の成績は学年で6位だった。5番以内を目指していたそうで、悔しがっているtehu氏の姿が印象的だった。

 そんな、tehu氏がコンピュータと初めて出会ったのは2歳で、SHARPの書院だったそうだ。そして、3歳でウィンドウズ98のパソコン、そして2008年、iPhoneに出会った。次いでアップルのMacBookも購入。当時はプログラムを知らなかったが、あるニュースが、tehu氏のその後を変えることになった。

 それは「9歳の少年がiPhone用ソフトを開発」という報道だった。当時、小学校4年生のリム・ディン・ウェン君は、iPhone上で絵を描くことができるソフト「Doodle Kids」を開発、アップルのサイト「iTunes(アイチューンズ)ストア」で2週間、4000回以上ダウンロードされた。

 「やはりシンガポールの少年に追いつきたい、っていう気持ちがあったからだと思います。ニュースに感心して自分でも作ろうと思うようになりました。書籍を買いあさって、今は家に20冊ぐらいiPhone開発関連の書籍があります。慣れの問題で、数カ月も勉強していれば自然にできるようになりました。シンガポールの少年が作ったアプリと同じアプリを作れるようになったのは1年後です」

 1年で少年に追いついたが、tehu氏には元々適性があったのだろう。学校ではパソコン研究部に所属。iPhoneを担当している。

 「開発のおもしろい点は、やっぱり自分の書いたコード通りにコンピュータが動いてくれることですね。しかも、世界を相手に勝負できるシステムが整っているので、iPhone向けアプリの開発に没頭してしまいました」

 そしてついに、2作目で大ヒットアプリ「健康計算機」が生み出された。ヒットアプリの作り方とはどのようなものだろうか。

「健康計算機」は、年齢、身長、体重などを入力するだけで理想体重、推奨摂取カロリーなどが弾き出される。使えば一目瞭然だが、実にシンプルで使いやすい。ウケるのも納得だ。

 「もともと自分の体型(身長1メートル92、体重88キロ)に悩みがあったことから作りました。プログラム自体は簡単で、厚生労働省からデータを引っ張り出してイジイジして完了でしたが、一番困ったのはアプリのデザインですね」

 実際にはプログラムは3時間で完成。だが、デザインに2日を要した。アプリをヒットさせる秘密は、どうやらここにあるようだ。

 「単純なものほどデザインが難しくなるっていうことは、よくあることで、漢字書くときでもすごい難しい字はきれいに書けるのに簡単な字(女とか)は難しかったりしますよね。あれと同じです。デザインにかけた時間の半分はアイコンデザインとアプリ名称にかけました。よく僕の講演でも言うのですが、アプリで一番大事なのはアイコンと名称なんです」

 健康計算機のアイコンは、背景が青を基調とした円形グラデーション。そこに白い長方形型の人間が経っているというシンプルで、なおかつ印象的なデザインだ。



健康計算機
 「AppStoreのアプリ一覧にはアイコン・アプリ名・星評価しか載ってないので。説明文を読ませる前に自分のアプリに興味を持ってもらう必要があるんです」

 どうやら、アナログな要素が多いように思えてくる。プログラムが苦手な人でも、少し勉強すれば、ヒットのチャンスは転がっているのかもしれない。

 中学生にして、ここまで形にしたあたりは流石だ。では、今後の開発や夢は?

現在は灘中学に通うtehu氏は、灘高へ行く。灘高→東大という「規定ライン」を思い浮かべてしまうのだが、海外でという希望を持っているという。

 「僕はアメリカのスタンフォード大学への進学を希望しています。灘の海外進学を推進している先生が主催する特殊な合宿にも参加させていただいたりして、いまはアメリカに行くために自分自身を磨いてるところです。TOEFL、SAT、エッセイで点数をとらないといきたくてもいけないし」

 アップルの元マーケティング本部の外村仁氏、ITジャーナリストの林信行氏、ライブドア元CEOの堀江貴文氏らと話をした時に、進学するなら海外の方が良いと勧められたそうだ。アメリカの学習環境の良さなどを考えてのことだそう。

 「(卒業後は)数年企業で働いて、起業を考えています。どういう起業をすればいいのかは、まだ決めていません。十数年も後の話ですから。そのときに流行りそうな分野で会社を立ち上げられたらいいなと思います。夢としては、革新的なユーザーインターフェイスの実現です。例えば、脳と端末を直接リンクさせて、思った事を実行するようにしたり。そういうものを構築してしまえば、(キーを)カタカタ打つ必要もなくなります。まあいつ実現できるかはわかりませんが」

 グーグル、ヤフーなど多くのテクノロジー系の創業者を生みだしたスタンフォード大への進学を希望するtehu氏。今年は「健康計算機」の新バージョンを発表予定だとか。十数年後は、何かとてつもないことをやり遂げているかもしれない。






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