第一話【偶然の産物】
第二話【再会がもたらすもの】 作/諒 Produced by 江彰 透
第三話【約束】
第四話【意固地】 作/諒 Produced by 江彰 透
偶然の再会から一箇月が経とうとしていた。
女将さんのところの忘年会。
「はて どうしたもんか?」
軽口とはいえ、約束事は自分の感情でキャンセルするのは昔からどうも苦手。
「あぁ そうや あいつに電話しよう」
小学・中学・高校の同級生であり、地元で歯科技工所を経営している親友に電話していた。彼とは高校になってからつるむようになった間柄。
「もしもし」
「おおー まいど この前はお構えなしやったなぁ」
先月数十年ぶりに親友のところにも寄っていた。
「来週あたりまた大阪帰るけど 忘年会でもどうや?」
「えぇで いつや?」
女将さんのところの忘年会は日曜、お互いの仕事のスケジュールからその前日の土曜に約束した。
土曜はミエちゃんの当番ではないけど日常なかなかかみ合わないものだと、電話を切ったあと一人苦笑いしていた。
ただ親友との忘年会は女将さんのところでゴリ押した。
そして土曜の当日七時ごろの約束も、お互いの都合が早々とついて夕方五時ごろから懐かしく親交を取り戻していた。
そして当初七時ごろの予定を東京から新幹線で女将さんには電話していたけど。大幅に過ぎた九時ごろに親友とともに女将さんの暖簾をくぐった。
案の定女将さんのコテコテ大阪弁で開口一番。
「たっしゃん おそいで」
いつのまにか田村さんからたっしゃんに…
「こっちこっち」
でも女将さんの満面な笑顔で、見覚えのある常連さんの方へ案内された。
その後簡単に親友を紹介して盃を重ねた。またカウンター越しにいる初枝ちゃんもまた後輩であり地元ネタで盛り上がっていた。
しばらくして女将さんから忘年会の待ち合わせと会費徴収。
思わず親友に。
「おい おまえもどうや?」
急遽忘年会の参加を促していた。すると親友ものりがよく。
「明日はコンペあるけど終わってから直接会場へ向かうわ」
「ほんま 嬉しいわ」
女将さんも思わぬ参加に笑みを浮かべていた。
「じゃ 女将さん こいつと僕の会費!」
その後、もちろん午前様まで賑わいをみせた。
翌日マイクロバスの待ち合わせに出向いた。
見覚えのある人やない人。みな会釈しながらしばらく全員集合するまで待機。
幹事が女将さんと共に名簿を覗きながらバタバタしていた。
しばらくしてあの人がやってきた。常連客に挨拶してみなと待機。
少し離れていた僕とは軽く会釈。
そしてようやくマイクロバス組が出揃い幹事が。
「お待たせしました ではマイクロバスまで」
そしてマイクロバスに向かう時に、なにやら後ろから人影が…振り返ると。
「田村さん ご無沙汰です」
「おおぉ 元気か?」
ドラマチックとは言えないまでも、まるで時が一時停止したようにふたことミコト。そしてあのひとはまた他の参加者のもとに。
マイクロバスに乗り込み忘年会場へ、会場での待ち合わせ組も揃い、また親友も合流していざ出陣。
僕と親友の新米組みは、周りの様子を伺いながら立ち位置、ただ女将さんの人望で集まる多数の参加者には驚いていた。すると女将さんが。
「たっしゃんとあんたもええからそこに座り」
立ち往生を察して誘導してくれた。
みな着席すると何故か女将さんは僕の右横、左には親友そして向かいにミエちゃんが。
ほどなく乾杯から忘年会がスタート。しばらくして新米僕と親友の自己紹介、そして老若男女が盃を交わしあっていた。また女将さんの横に座ってる関係で、僕は慌しく盃を重ねていた。
新米などお構えなしでええのに、女将さんの心遣いには感動がこみ上げていた。
宴たけなわのなかミエちゃんに会話を親友と共に投げかけると、親友も同じ小学・中学なのに見覚えなし。
その後は当たり障りのない会話と盃で宴会は一次会を終了した。
そして自由参加で二次会、親友は予定があり不参加。僕も不参加を胸に秘め、マイクロバスは途中の二次会場経由でもとの集合場所へと発車。
ただ二次会場に近づくとミエちゃんが僕を手招き。思わず二次会場に降りていた。
二次会場はカラオケスナック、女将さんは常連さんのところにひっぱりだこ。
僕の腰かけているボックスに程なくミエちゃんが座る。
「なんでやねん?」
「ええねん ここで」
引っ掛っていた話をストレートに聞いてみた。
「なぁ 土曜日なんでけーへんかった?」
「…」
それ以上つっこむことはしなかった。彼女の心の扉に無理強いはしたくなかった。ただもうひとつ…
「それとさぁ メールアドレスのメモ持ってんの?」
「…」
「そやんなぁ 箸紙はどっかいくやんな?」
「いまここで改めて書くから 気が向いたら音信してきてええでぇ」
「…」
気を取り直してその後は世間話や盃を重ねあっていた。ただ彼女も女将さんのスタッフ、他の常連客への気配りを抑えて僕のところにつきっきり。やはり申し訳なさを覚えた。
「ミエちゃん! 他の常連さんのところに行ってええで」
そして今度は無理強いさせて席を離れさせた。
しばらく盃をかさねて、一部退散組みに便乗して、彼女の視界から消えていった。
翌日東京にもどる前、名古屋のビジネス予定をこなし会食の後。
「あぁ そうや 女将さんに 電話しなきゃ」
女将さんの店の名刺をとりだして。
「もしもし 女将さん」
「あら たっしゃん!」
「女将さん昨日はありがとうございました」
「それとミエちゃんにも いろいろお世話になり お礼を伝えといてください」
「はぁ~い こちらこそ おおきに 体調とか気つけや」
「はい! では…」
女将さんへ礼をつくし、またミエちゃんの面影を浮かべながら、彼女の心の扉にノックをしていた。
「大丈夫か?」って
彼女のいままでの人生そして身の上、測り知れないものがある。
ただ
ただ
何故だか分からないけど、僕の遠い昔からの魂が叫んでいるように思えてならない。先輩・異性など超越して…
「ほんまに 大丈夫なんか?」
第六話
諒さんでつづきます
第二話【再会がもたらすもの】 作/諒 Produced by 江彰 透
第三話【約束】
第四話【意固地】 作/諒 Produced by 江彰 透
偶然の再会から一箇月が経とうとしていた。
女将さんのところの忘年会。
「はて どうしたもんか?」
軽口とはいえ、約束事は自分の感情でキャンセルするのは昔からどうも苦手。
「あぁ そうや あいつに電話しよう」
小学・中学・高校の同級生であり、地元で歯科技工所を経営している親友に電話していた。彼とは高校になってからつるむようになった間柄。
「もしもし」
「おおー まいど この前はお構えなしやったなぁ」
先月数十年ぶりに親友のところにも寄っていた。
「来週あたりまた大阪帰るけど 忘年会でもどうや?」
「えぇで いつや?」
女将さんのところの忘年会は日曜、お互いの仕事のスケジュールからその前日の土曜に約束した。
土曜はミエちゃんの当番ではないけど日常なかなかかみ合わないものだと、電話を切ったあと一人苦笑いしていた。
ただ親友との忘年会は女将さんのところでゴリ押した。
そして土曜の当日七時ごろの約束も、お互いの都合が早々とついて夕方五時ごろから懐かしく親交を取り戻していた。
そして当初七時ごろの予定を東京から新幹線で女将さんには電話していたけど。大幅に過ぎた九時ごろに親友とともに女将さんの暖簾をくぐった。
案の定女将さんのコテコテ大阪弁で開口一番。
「たっしゃん おそいで」
いつのまにか田村さんからたっしゃんに…
「こっちこっち」
でも女将さんの満面な笑顔で、見覚えのある常連さんの方へ案内された。
その後簡単に親友を紹介して盃を重ねた。またカウンター越しにいる初枝ちゃんもまた後輩であり地元ネタで盛り上がっていた。
しばらくして女将さんから忘年会の待ち合わせと会費徴収。
思わず親友に。
「おい おまえもどうや?」
急遽忘年会の参加を促していた。すると親友ものりがよく。
「明日はコンペあるけど終わってから直接会場へ向かうわ」
「ほんま 嬉しいわ」
女将さんも思わぬ参加に笑みを浮かべていた。
「じゃ 女将さん こいつと僕の会費!」
その後、もちろん午前様まで賑わいをみせた。
翌日マイクロバスの待ち合わせに出向いた。
見覚えのある人やない人。みな会釈しながらしばらく全員集合するまで待機。
幹事が女将さんと共に名簿を覗きながらバタバタしていた。
しばらくしてあの人がやってきた。常連客に挨拶してみなと待機。
少し離れていた僕とは軽く会釈。
そしてようやくマイクロバス組が出揃い幹事が。
「お待たせしました ではマイクロバスまで」
そしてマイクロバスに向かう時に、なにやら後ろから人影が…振り返ると。
「田村さん ご無沙汰です」
「おおぉ 元気か?」
ドラマチックとは言えないまでも、まるで時が一時停止したようにふたことミコト。そしてあのひとはまた他の参加者のもとに。
マイクロバスに乗り込み忘年会場へ、会場での待ち合わせ組も揃い、また親友も合流していざ出陣。
僕と親友の新米組みは、周りの様子を伺いながら立ち位置、ただ女将さんの人望で集まる多数の参加者には驚いていた。すると女将さんが。
「たっしゃんとあんたもええからそこに座り」
立ち往生を察して誘導してくれた。
みな着席すると何故か女将さんは僕の右横、左には親友そして向かいにミエちゃんが。
ほどなく乾杯から忘年会がスタート。しばらくして新米僕と親友の自己紹介、そして老若男女が盃を交わしあっていた。また女将さんの横に座ってる関係で、僕は慌しく盃を重ねていた。
新米などお構えなしでええのに、女将さんの心遣いには感動がこみ上げていた。
宴たけなわのなかミエちゃんに会話を親友と共に投げかけると、親友も同じ小学・中学なのに見覚えなし。
その後は当たり障りのない会話と盃で宴会は一次会を終了した。
そして自由参加で二次会、親友は予定があり不参加。僕も不参加を胸に秘め、マイクロバスは途中の二次会場経由でもとの集合場所へと発車。
ただ二次会場に近づくとミエちゃんが僕を手招き。思わず二次会場に降りていた。
二次会場はカラオケスナック、女将さんは常連さんのところにひっぱりだこ。
僕の腰かけているボックスに程なくミエちゃんが座る。
「なんでやねん?」
「ええねん ここで」
引っ掛っていた話をストレートに聞いてみた。
「なぁ 土曜日なんでけーへんかった?」
「…」
それ以上つっこむことはしなかった。彼女の心の扉に無理強いはしたくなかった。ただもうひとつ…
「それとさぁ メールアドレスのメモ持ってんの?」
「…」
「そやんなぁ 箸紙はどっかいくやんな?」
「いまここで改めて書くから 気が向いたら音信してきてええでぇ」
「…」
気を取り直してその後は世間話や盃を重ねあっていた。ただ彼女も女将さんのスタッフ、他の常連客への気配りを抑えて僕のところにつきっきり。やはり申し訳なさを覚えた。
「ミエちゃん! 他の常連さんのところに行ってええで」
そして今度は無理強いさせて席を離れさせた。
しばらく盃をかさねて、一部退散組みに便乗して、彼女の視界から消えていった。
翌日東京にもどる前、名古屋のビジネス予定をこなし会食の後。
「あぁ そうや 女将さんに 電話しなきゃ」
女将さんの店の名刺をとりだして。
「もしもし 女将さん」
「あら たっしゃん!」
「女将さん昨日はありがとうございました」
「それとミエちゃんにも いろいろお世話になり お礼を伝えといてください」
「はぁ~い こちらこそ おおきに 体調とか気つけや」
「はい! では…」
女将さんへ礼をつくし、またミエちゃんの面影を浮かべながら、彼女の心の扉にノックをしていた。
「大丈夫か?」って
彼女のいままでの人生そして身の上、測り知れないものがある。
ただ
ただ
何故だか分からないけど、僕の遠い昔からの魂が叫んでいるように思えてならない。先輩・異性など超越して…
「ほんまに 大丈夫なんか?」
第六話
諒さんでつづきます