果てなく続くストーリー






最終話 「双子のような親友」



待ち合わせしたCAFEで、淳君に、

ヨシコの腫瘍の再発の、事の次第を話した。

淳君は、黙って聞いていた、聞き終わるとすぐさま。

「先輩! 今からよっこのところに行くけど」

「独りで大丈夫ですか?」

「うん!」

「ほんま!?」

私の顔を覗き込みながら聞きなおす。

「うん」

「じゃ 先輩! お先にごめんね」

「ほんまに 気つけてなぁ!」

淳君はなによりショックなはずなのに、

私への気遣いをして、

足早にヨシコのもとに行った。


独り取り残されたカフェで、

ここ数日の閉じ込めていた想いが滲み出てきた。

ヨシコとの今までの想い出が怒涛のごとくよみがえり、

瞼から豪雨のように涙が溢れ出した。


そして、

ヨシコの三月の入院から、春、夏と時が流れていった。

「おばさん!」

「知美ちゃん!」

「どう? ヨシコ」

「うん 少しずつだけど いい兆しが見えてきたよ」

ヨシコの病状もだいぶ良くなり、

担当医も手術の可能性もでてきたってことらしい。


「淳君や晋介君や知美ちゃんたちが」

「毎日のように来てくれるおかげで」

「・・・」

おばさんもさぞかし辛いだろうなぁ?

でも・・・

「だめだめ おばさん!」

「ヨシコ、粘り強いし」

「結果を恐れずがんばること」

「おばさんが一番よく知ってるでしょ!」

「さぁ!」

「シャンとしてシャンと!」

「うん!そうね」


淳君も毎日ヨシコに会いに来てくれていた。

二人の愛で病魔も退散してくれたらいいのにって、

ただ願うばかりだった。


でも

八月も終わり九月に入り、

ヨシコの容態は、嘔吐や痛みも激しくなっていった。

処置が長くなり、お見舞いの時間も取れなくなっていた。

それなのに、

私と

私の彼こと晋介、

晋介もヨシコと同様幼稚園からの幼馴染。

そして、ヨシコの初恋相手で、

ヨシコが生まれて始めて、

自分を曝け出すことができた異性、

淳君。


三人だけは

ヨシコは素のままで、必ず病室に迎え入れていた。


三人とも、口にこそ出さないけど

最後まで、三人で手を重ねて

「ファイト! オー」

って、

主役ヨシコの、

脇をガードしていた。


ただ

ヨシコも死力を尽くし、天命の審判が下る日が、

じわりじわりと近寄ってきていたとは・・・


あの肌寒い九月の下旬の病室で。

「ねえ! 知美!」

「うん! 痛いの? 擦ろうか!」

「ううん! 大丈夫」

「あのね、知美とはずっと一緒たね!」

「うん!」

「知美、覚えてる? 幼稚園のときの・・・」

今日は、いつもと違って、

二人の幼ななじみの想いでを、

延々と話していた。


ヨシコとは、

幼少のときから

お泊りのやりっこで、家族といるより

多かったかもしれいほど一緒にいた。

お互い一人っ子。

だから父親が二人、母親が二人って思うほど。


悩みに、涙に、喜びに、励ましに、

時には叱咤も。

思考のレパートリー

全部使って

まるで、二人で心のシーソーをしていたような感じ。


それに

お互い、晋介と淳君と、恋人関係に発展してからも、

晋介と淳君のことは筒抜けで、

まるで双子のように、なにもかも知っていた。

晋介も淳君も、

いつしか筒抜けを公認していた、

ううん、呆れていたのかもしれない。


四人とも同じ中学で、

バレボール部

淳君はひとつ下級なんだけど、

よく四人で会っていた。


ただ筒抜けには、晋介も淳君も。

「二人にはかなわへんなぁ!」って

四人で爆笑の渦に包まれていた。


楽しいことや良かれと思うことは、

満場一致になるけど、

チョンボや欠点は、一対三で集中砲火を浴びて、

一人ベソを掻くことになる。

でも、最後は許して、砲火を浴びせた三人で

「ヨシヨシ」って・・・


ただ、淳君が一番、集中砲火多かったかな!

そのときは、三人で非難を浴びせるんだけど

ヨシコの寝返ることの早いこと!

そんなことを想ってると・・・


「ねぇ 知美!」

「ごめん! 長話になっちゃったね」

「ううん ぜんぜん!」

「・・・」

「ヨシコ! どうしたの?」

「・・・」

「淳のことが・・・」

「ヨシコ!」

「わかってるって!」

あの時はさすがの私も

二人で嗚咽することしかできなかった。


そして

追い討ちをかけるように

まさか、

あのときが、

ヨシコとの最後の会話になるとは、

思いもよらなかった。


あの日の三日後、9月29日

私と晋介が駆けつけたときには、

双子のような親友、

私のかけがえのない

ヨシコは、

静かに永遠の眠りについていた。


ただ、淳君に

最初の死に水をとってもらって

ヨシコ

「よかったね」


そして

私と晋介も

死に水とって

日ごろ

チョンボが

一番少ない

ヨシコに

三人で

号泣で

集中砲火を浴びせていた。



ただ

ヨシコの最後のオネガイ

「淳君」

あなたに代わって

私と

もちろん

晋介も全面協力だから

「大丈夫よ」って

ヨシコに呟いていた・・・





END



・・・・・・・


エピローグ 「お礼状」


知美先輩!


あの日から

三十四年の歳月が流れて

初めて明かしたくれた

エピソードの数々

驚きが隠せません



貴女とよっことの

最後の約束

知る由もなかった



今まで陰日向になり

支えてくれていたことに

心から感謝いたします



もう大丈夫ですよ

どうか

貴女が

今まで堪えていた

よっこへの号泣

してあげてください



きっと

よっこも

何より

貴女の号泣

待っていますよ



このさき

三人から

二人

一人

無人へと

自然の摂理



されど

果てなく

心に

語り継いで

いきましょうね



そして

再び

四人で

爆笑しましょうね



本当に

ありがとうございました



by 淳



・・・・・・



『あとがき』


ブログではメロウの心の内や

ロマンなどを書き綴っていて

親兄弟や縁故者などには守秘しています。

少し管理人のうちを

あとがきとして

書いてみたくなりました。


メロウの創作は

作者の体験が影響していることは

否定しないまでも

ダイレクトに書いていることは

少なく

想いを想定していたり

仮想している場合がほとんどです。


そのな中で

ある物語『遥かなる天国へ』



ショートストーリー『遥かなる天国へ(広瀬知美編)』



僕の中学一年から高校二年生までの

リアル体験をモチーフにして

時代背景などを脚色して創作しています。


ただ

広瀬知美編だけは

途中まで

想定して書き綴っていきましたが

やはり

リアルな先輩の遥かなる深意は計り知れず

最終話の途中で

行き詰ってしまいました。


そんな中

今年は

愛媛での命日法要で

作中にでてくる

知美先輩と晋介先輩のモデルと

十年ぶりの再会

そして

ヨシコの墓前と

東京に来てからご無沙汰ただから

八年ぶりの再会を

無事果たし

この先の余命に安堵感が漂いました。


そして

今年は

先輩たちに

エピソードを聞けて

なんとか

完結することができました。


また

よっこのお父さんは

すでに他界していますが

お母さんと再会できて

このうえない

無量感に浸ることができました。


残された者として

墓守を

お母さん含め僕たち三人で

できるかぎり

お努めできれば幸いだねって

愛媛の宇和を後にしました。


おばさん

いえ

お母さん身体を労わって

長生きしてね

今を生きてる

子供たち三人が親孝行するからね!


だって

よっこから

集中砲火あびるから

(*゜.゜)ゞポリポリ