家族団らんの夕食も終わり。

後片付けも済んだ妻は、お決まりのテラスへ、

ヘッドフォン片手に向かい、夜空と独りの時間を過ごすみたいだ。

僕の家族は妻と愛娘えりの三人家族。

仕事では、30人ほどの社員の小規模な会社で、

主にマンションなどの販売を受託している会社の役員をしていて、

社員の手前、カリスマを演じながら、毎日号令をかけている。

ただ、家庭では多数決で負けるからおとなしくしている。

娘と僕はリビングでモニターの字幕と映像をにらめっこしながら映画を観ている。

妻は仕事に家事に育児に追われて、なかなか独りの時間不足で、

唯一の楽しみが、テラスでヘッドホンをしながら、夜空と過ごすことみたいだ。

「えり!」

もう高校三年になった、ひとり娘に声をかける。

「なーに ぱぱ」

「ママと今から、少し二人で、でかけるけどいいかな?」

娘ができてから、彼女と二人で、でかけることは皆無なことに、最近なぜか気にかかる。

定年になって、熟年離婚されないように、少し、労わろうかなっと、

独りクス笑いしながら、娘に根回ししてみた。

「うん! いいよ! パパ」

「でも ママのご機嫌とってどうするの?」

当然だけど、えりは不思議がる。

ただ、その後のツッコミには思わずびっくり。

「あー パパ もしかして 浮気したの?」

「えぇ! バレタ?」

「って そんなわけないやろ!」

思わず二人で大笑い。

この娘の愛嬌は、あいつ譲りだなって思いながらテラスへ向かう。

彼女のヘッドホンをはずして声をかける。

「どう 今日は ほし見える?」

「ううん! 今日はお休みみたい」

「昼間は晴れ間だったから、期待していたんだけど」

残念そうに俯き加減にしゃべる。

「ところで ぱぱ どうしたの?」

「駅前のバーに、一杯ひっかけにいこうかなって」

「うん どうぞ いってらしゃい」

「ママも 一緒にどうだ?」

「えぇー えりは、退屈だよ!?」

えりと三人って思ってるみたいで、まさか、ふたりだけとは、思っていないみたいだ。

「えりはお留守番してくれるって」

「たまには、ヘッドフォン外して、カクテル片手にどうだ!」

「うん! じゃすぐ用意するね!」

妻が、テラスから居間に向かおうとすると。

リビングから、娘のチャラケタ声が聞こえてくる。

「ママ! パパ、浮気したみたいだよ」

三人の笑い声がハーモニーになって、

それぞれの想いとともに、

星に願いを込めていた。