久しぶりに
ゆったりとした湯船に
背もたれてみる

周りから
銭湯特有の
エコーのかかった
「カラン コロン」っと
音色が
どこか心地よく
聞こえてくる

いつしか
タイムスリップ
場面や
想いが
走馬灯してくる

そして いつしか
周りの音色まで
聞こえてこない

すると
どこからともなく
エコーの掛かった声が
聞こえてくる



「ねぇ 今宮君!」
「私と別れて 損したって思っているでしょ?」

あぁ! 由美! 

今さら 
何 
言ってるんだ
別れたいって
言ったのは 
由美だろ


でも

うんうん

今更だけど 
大損したって
思っている



「私ね あの時」
「振り返って追いかけてくれると思っていたよ」


「私ね あの時」
「ずっと 待ちわびていたんだよ」

えぇ 
そんなこと 
今さら言われても



「私ね あの時」
「逃避行したいって思っただけなんだから」

「そう ちょっとした」
「逃避行」

(でも)

(今宮君!)
(私も)
(大損したって想ってるよ)

(だから)
(今度は)
(もう二度と)
(逃避行しないから)
(追っかけてきてね)

(今からでも)
(いいからね)

(だって)
(ずっと)
(待ってるもん)