第一話「意外な音信」

 ブルブル~・・・
腰に掛けている、携帯のバイブが響く。
職場の掛け時計を見ると、もうすぐ夜の10時になろうとしていた。
(今日は、確か、水曜日だよなぁ)
 最近は、ウィークデーには、滅多に繋かってこない。
 誰だろうと思いながら、携帯を開いて見ると。
(あらぁ~ 明先輩だぁ)
 明先輩は、大学の時の二級上で、当時はBarのバイトでも、一緒だったから、社会人になっても、年に数回交流している。
 僕も社会人13年生だから、もう十七年の付き合いになる。
 ここ数年は、先輩が忙しくて、夏と年末に定番的に会っている。
 ついこの間も、八月上旬に、いろんな話題で午前様だった。
(おっと、出なきゃ)
「もしも~し」
「進~」
 先輩の、どちらかといえば、耳障りのよくない声が、受話口から聞こえる。
 本人は、低音でダンディーと、思ってるみたいで。
「はい、進です」
「ところで、先輩どうしたんですか?」
 用件が読めなかったから、思わず疑心暗鬼に、返事してしまった。
「まだ残業してんのかぁ?」
「お疲れ様」
 まるで、浮足立った僕の心境を、沈めるように労る言葉。
「ところで、用件はなぁ、近いうちに、Sunny・Sideに行けへんかぁ?」
 Sunny・Sideは、先輩も僕も、大学の四年間バイトした、SHOTバーだ。

 僕は卒業してからは、足を運んでいない。

 先輩も、それ以降は、僕に付き合って行っていない。
 先輩は、別にいいのにって思うけど。

「・・・」
 僕が、少し戸惑どってると。

「進、いつも、おまえのお気に入りばかり、付き合ってるやろぉ」
「最後でいいから、今回は俺に付き合え」

 確かに先輩は、僕を弟みたいに、また時には鬼教官になって、可愛がってくれている。
 先輩の意味深な誘い。
 でもなぁ。
 どうも、気乗りはしない。
(まぁ、しょうがない)
(今日は教官バージョンだし)
「はい、わかりました」
「来週の木曜でいいですか?」

「了解」
「詳細はまたなぁ」
「じゃぁなぁ」
 早々と、用件だけ言って、切られた。

 それはそうと、何故Sunny・Sideへ?

(でも あれから十三年かぁ~)