先日、渋谷のSGclubの三階にある”SANGAI"というバーに行かせてもらう機会があった。
久しぶりに大人の静かなバーに行かせてもらい、ワクワクした。
ここでは日本で作られているフルーツやお酒を使ったカクテルのコースを楽しめる。
私が行った日はバーテンダーの後閑さんがいらっしゃり、そのサービスのクオリティーに感動した。
幕末(1858年頃)徳川幕府の時代に侍を視察団としてアメリカに渡らせた。
その侍たちはニューヨーク、マンハッタンにも滞在した。
当時、ジェリー・トーマスというバーテンダーがニューヨークにいた。
バーテンダー業界では有名な人で、彼がアメリカ全土にカクテルを普及させた人、言われている。
侍たちがマンハッタン滞在中に何をしていたかははっきりとはわからない。
ただ、滞在先の数ブロック先にジェリー・トーマスのバーがあったとされている。
そのジェリー・トーマスが侍たちが滞在した数年後にカクテルのレシピ本を出した。
その中に、侍からインスピレーションを受けたカクテルというレシピが乗っているのだそう。
だから、きっと彼らはジェリー・トーマスのバーに行ったのだろう。
侍たちがバーにいる姿を想像したら面白い。
その後、1920年から1933年までアメリカでは禁酒法が出た。飲料アルコールの醸造、販売等ができなくなった。
あかんと言われたら、飲みたくなるのが人というもの。
その時代にたくさんのSpeakeasyなバーができた。Speakeasy(スピークイージー)とは隠れ家的な秘密の酒場のような感じだ。
(コロナの時代にもSpeakeasyという言葉が再び出てきた)
それを踏まえて、このSANGAIのバーのコンセプトは、もしNYから帰ってきた侍たちがSpeakeasyのバーを作ったらどんな感じになるか、というものだった。
入った時から内装が好きだったが、その説明を聞いてもっと好きになった。
さて、私がいただいたのは、熊本のスイカ、山梨の桃、沖縄のパッションフルーツ、宮崎のライチ、北海道のとうもろこしを使ったカクテルのコースメニューだった。
素材が美しく、美味しかった。
カクテルの素晴らしさをグルメレポーターのように長々と色々説明したいが、いったん省略するが、沖縄の話をしたい。
沖縄をテーマにしたカクテルでは、オリジナルの泡盛と黒糖を使った一杯が提供された。
沖縄といえば泡盛。泡盛はタイ米を原料として造られており、そのためのタイ米は減税措置を受けて輸入されているそうだ。しかし現在は泡盛の消費が減り、多くの酒造所が厳しい経営状況に置かれ、半数以上が赤字だという。
そして、黒糖。
一方で、沖縄名産の黒糖。その多くは離島で作られているが、日常的に大量に消費されるものではなく、毎年余ってしまうほど生産されているそうだ。
それでも、毎年島の人たちは生産している。それはなぜか?
黒糖づくりは、島で暮らす人たちの生活を支える大切な産業だからだ。そして、国としても島に人が住み続けることには大きな意味がある。もし島が無人になれば、領土という観点からもさまざまな問題が生じる可能性がある。
だから、後閑さんは黒糖を使ったオリジナルアルコールを作り、それでカクテルを作ることにした。

カクテルを通して、日本の生産者を応援し、地域にも貢献できる。
これって素晴らしい話じゃない?
カクテルコースメニューをいただきながら、こう思った。
もっと勉強しておけばよかった。
地理や歴史、社会の時間に別にいらんわ〜と思っていたことを、もっと勉強したい。
もう一つ、カクテル以外に感銘を受けたことがあった。
それは、若いバーテンダーの女性がカクテルのための各フルーツを切り、潰し、フレッシュジュースを一生懸命に作っていた。
私は正面に座っていて、スタッフの方々が働く様子がよく見えた。
その際、果汁が飛ばないように気をつけて、とものすごく小さな声で注意された。
視野を広く持つのはどの職業でも大切なことだと思う。
彼女が真剣に新しいフルーツの下ごしらえしていた時にはこう声をかけた。
顔を柔らかくして。と。
みなさんここに楽しみに来ているので、必死の表情でやりすぎないように注意して、手を動かして。
首から下を一生懸命やっても大丈夫。だけど、誰が見てもわかるほど真剣にやりすぎると、それを見た人がリラックスできないことがある。
これは私が仕事中徹底していることだったので、すぐに伝えたいことがわかった。
彼女がどれだけ理解できているかは定かではないが、本当に大切なこと。
私も患者さんと対面した時に、どれだけ急いでいても、急いでいるように話しかけない。
怖い顔や早口で話をしない。
その代わり、急いでいる時は両手だけはものすごい速さで仕事を進める。
リラックスできるように、優しい笑顔を忘れない。
私もこのバーで修行がしたいと思うほど、いい経験をさせてもらった。
子供に何のために勉強するのか?と聞かれたら
受験のためとか、将来のためとかそんな答えしか思いつかなかったかもしれないが、今ならこう思う。
勉強した方が、圧倒的に人生は面白い。そして豊かな気分になる。
関係のない点と点が繋がり、世界が広がっていく。
そこから、見えたことのない景色が見え、感じられる。
まるで平面で見えていた世界が立体化し、絵から動画になっていく感じだ。
大人になればなるほど、勉強がおもしろくなる人生っていいなと思った。