朝。


起きてすぐに朝食の支度をする。


風と共に流れるトーストの香り。朝なのにお腹が鳴った気がした。



8月1日






テーブルに並ぶのは、ストロベリーとマーマレードのジャム。


彼が甘党なのを知ったのはつい最近。
似合わない、って言ったらちょっとだけ拗ねたっけ。



パンが焼き上がっても起きて来ないのは毎日のこと。
でも自然と階段を上る足取りは軽くなる。




そっと部屋のドアを開けると、やっぱり相変わらずの寝相。



気付かれない様に顔を覗き込む。
近くで見ればよくわかる意外と長い睫毛。大人になっても変わらない寝顔。


どれもが可愛くて、思わず笑みが零れた。





「早く起きて。遅刻したら承知しないわよ」






ね、そう言えば目にも留まらぬ速さで起き上がるの。
そんなあなたが可笑しくて、私は声を上げて笑う。



10分後、食卓に付いて話すのは他愛もない話ばかり。

でも、その一つひとつがいとおしくて仕方がない。



何故なら今日は八月一日。
久しぶりに仲間が集う日だから。

彼らに会うために私たちは玄関に向かう。



行き先は会社じゃない。
信じられないぐらい思い出の詰まった楽しい場所へ。

ドアノブに手を掛ければ、いつも通りに近づく彼の唇。
私はそれを人差し指でそっと制止する。



「今日は見送りじゃないから」



そう言って、ちょっとだけ不満そうな顔をするあなたの手を取って外へ出る。




夏の日差しの中、何よりも大切な仲間達のもとへ、その誰よりも特別な人と一緒
に、私はあの世界へと再び旅立つんだ。




*あとがき*

ストロベリーは太一。マーマレードは空。


メモリアル記念。


2008/8/12     たっち