かくれんぼでも、隠れるほうにしかなったことがありません。
幼い頃は、それが自慢でした。
楽しかったですし、得意になってもいました。
暑くて寝苦しく、蛙の声がうるさかったのを覚えているから、夏だったという記憶に間違いはないでしょう。
その日、ガリガリくんと、スイカを際限なく食べた私は、夜中にトイレに起きたのです。
居間のほうから、父親と母親の話す声がしました。
別に聞こうと思ったわけではなくとも、騒音などなにもない、田舎の家ですから、自然と耳に入ってくるのです。
「今日、学校の先生から連絡があってね。他の子の親御さんから、苦情がきてるらしいのよ。
もう、ハンデあげて、ビッグドラゴンを鬼にしないように遊ぶのは、面倒くさいから嫌だって言われて困ってるみたいなの…」
「まあ、それをお願いしたのも、小学校に入る頃だから、もう五年も経つしな。
小学校も五年生になれば、普通に競い合う遊びしたいってのは、当たり前っていやぁ、当たり前だな」
「でも、ビッグドラゴンは、まだ何も気づいてないから、学校の作文とかにも、鬼ごっこが得意とか、かくれんぼなら誰にも負けないとか、いろいろ書いちゃってるくらいなのよ。
ショック受けないかしら…」
「まあ、小学校出るまでは、そのままにしてやればいいだろう。他の子の家にも、明日にでも、手土産持って挨拶に行こう」
…ハンデとは知らずに、得意になってました。
歯茎を出し、ニコニコしながら駆け回っておりました。
みなさん、救いようのない馬鹿だと思う方もいらっしゃるでしょう。
正直、ビッグドラゴン本人も、恥ずかしいお話だとは承知しております。
地域ぐるみ、学校までも巻き込んで、ハンデを与えられて、得意になっていたのですから。
今も、小学校の作文や、自己紹介をした文集を見ると、特技の欄に「かくれんぼ」という文字が、力強い筆跡で、これでもかと言わんばかりに、自己主張しております。
それでも、私は受け入れて生きていかなければなりません。
それが私という人間を形成した、幼少期なのですから。
地域の方々には、感謝こそあれ、恨む気持ちは微塵もありません。
その故郷に、胸を張って帰れる日を、強く思いながら、ビッグドラゴンは、今日も西の空を睨みながら、意味不明の叫び声をあげております。
ま、お前らも、少しくらい恥ずかしい思いをしても、成長すればいいんじゃないかな、とビッグドラゴンは思うよ。
俺はビッグドラゴン。
小学校五年生まで、お情けで皆に遊んでもらっていた男!
それが嫌で、六年生のときには、仲間はずれになった経験を、持つ男だ!
じゃあな!!
