Let it out! -9ページ目

Let it out!

ITで公共政策をもっと素敵なものにしようと日々戦うセールスパーソン。
贔屓目に見て銀河系イチ可愛い娘を育てながら日々社会と向き合う。

IT業界動向や政治経済、世界情勢などに加え、共働き育児家庭の現実も綴っていく予定。

たまにはブックレビューを。

題名からも想像できるとおり、富士山噴火を描いた小説である。登場人物がやや現実味に欠けていることを除けば、極めて緻密な調査に裏付けられた作品である。作者はさぞマニアックな火山研究者か何かかと思いきや、なんと医者というから驚いた。

「富士山噴火」と言うと、どことなくSF的な臭いを感じてしまう人も多いだろうが、本書を読むと、今の穏やかな富士山が歴史的に見て、如何に珍しい状態であるか痛感する。つまり、実際には「噴火しないと思うこと」が夢物語なのだ。

本書の面白い点は単なる地学、火山学的観点だけでなく、人類学、宗教学、言語学等の観点からも人類がどのように火山と向き合ってきたかが分かることにある。

また、本書内でも描かれているが、災害時の報道量と被災実態の相関は必ずしも正しくはないことに気付かされる。最も有名な1707年の宝永噴火でも、ちょっと火山灰が積もっただけで大騒ぎした江戸市民の様子は大きく取り上げられているが、実際に甚大な被害を受けた富士山麓の集落についてはあまり触れられることはない。今回の大雪報道を見ても分かる通り、首都である東京に少しでも雪が積もり、交通が乱れると各社こぞって取り上げられるが、本当に大きな被害を受けた山梨県の報道は後回しだった。結局、災害の大きさというのは人間が決めることであって、そこには様々な力学が働いているのが現実なのだ。

我々日本人は古来より火山の上に生活を育んできた。しかしながら、(少なくとも自分は)火山に対して余りにも無知である。本書に出会えたことでもう少し勉強してみようと言う気になった。

このテのパニック小説は(自分の知る限り)あまり女性陣の興味をそそらないようだが、是非「食わず嫌い」せずに手に取ってみて欲しい。