- 昨年、カンヌにも正式出品された三池崇史監督映画「藁の盾」を観た。
孫娘を殺された経済界の大物が、
「逃走中の容疑者・清丸国秀を殺した者に懸賞金10億円を出す」
と発表し、殺されることを恐れた清丸が福岡で出頭してくるところからストーリーは始まる。
警察は彼を福岡から東京へ移送するため、優秀なSPを付けるがその過程で様々なことが起こる、というのがおおざっぱな話。(ネタバレ防止で随分端折っているが)
結論から言うと「久々の5つ星!」な邦画である。
ここのところ割と良い邦画にめぐり合えていなかったが、本作は素晴らしい。三池監督でかつ、俳優陣も豪華そのものなので、逆に過大な期待はしていなかったのだが、完全に2時間釘付けでございました。
ストーリーの根幹にあるのは、孫娘を奪われた蜷川による清丸への「復讐心」である。その点では東野圭吾の「さまよう刃」と似ているが、蜷川がエクストリーム金持ちだったため、その「復讐」は懸賞金による殺害という形で犯人を追い込む。しかし、当然法治国家である我が国では、仇討ちはNGなので、出頭した犯人を無事東京に護送し、法の下で裁かれるよう努めるのが警察の役目だ。
本作ではその「正論」と犯人を許せないという「感情」の間で起こる葛藤が大変巧く表現されている。
「そんなことして殺された息子さんが喜ぶと思っているのか!」
という日本の復讐モノにはありがちな台詞だが、このあたりの葛藤はもしかしたらとても日本人的なのかもしれない。
ハリウッドとか韓国映画あたりだと、割と思いっきり「そんなこと」をやり切ってハッピーエンドとなる。「悪魔を見た」というイ・ビョンホン主演の韓国映画があるが、テーマが「どれだけ残酷な復讐ができるか」だったのでアプローチとして全く違ってくるので興味深い。
あと、個人的に良かったのは、藤原竜也が演じる犯人・清丸国秀が最後まで「マジでクズ」だったこと。世の中には色んな悪役があるが、あれはかなりのレベルでクズである。危うく演じている藤原竜也のことが嫌いになりそうなほどだ。やはり悪役はとことんまで嫌悪感を抱けるほうが良い。
ネタバレになるのでどんな結末かまで言及しないが、いずれにせよもし自分が被害者遺族だったら、間違いなく犯人を殺しにかかるだろう。残念ながら自分はそんな情や寛大な仏心は持ち合わせていない。子供を持つ身になった今、一層そう思う。
と、ここから刑法や少年法などの話になるとまた長くなるので、それはまた別の機会に。
- 藁の楯 わらのたて(通常版) [DVD]/大沢 たかお,松嶋 菜々子,岸谷 五朗