

パルミラから帰って来た日にあまりにも不運が続いたから
一緒に旅行していた日本人の人たちと『パルミラの石じゃね?』って事にだんだんなってきた。
そりゃそうだよね。
でっかいバックパックをバスの中に置き忘れたんだもん。
その後も色々不運が続いたし。
俺もそんな気がしてきてパルミラの石を処分したくて悩んだんだけど、
パルミラまで返しに行くわけにもいかないからダマスカスにある遺跡博物館の野外展示場に置いてきた。まあこれで大丈夫だって事にしてレバノンに向かった。
レバノンは聞いてはいたけどここはリトルヨーロッパ。
街には欧米系のファーストフードとか例えばバーガーキングとかも普通にあって、
綺麗で近代的だし、でっかいスーパーはあるし、酒は飲んでるし、豚肉は売ってるし、
他のイスラム圏の国とはかなり違う印象を受けた。
地区ごとに住み分けされてるからイスラム地区に行けばそこはもうイスラムだけど、
海岸線のリゾート地は看板の多くがフランス語だった。
また、街にはアーミーがたくさんいてそれだけは妙な雰囲気。
ベイルートでは反政府派の座り込みが行なわれているから、
詳しいことは知らないんだけど危なくはないから見に行った。
座り込みといっても何もない状態でやってるわけではなく
しっかりとしたテントもあるし、なぜか演説用のステージまであった。
座り込み会場は暗くストイックな雰囲気かと思ったけどそうでもなく、
そこら辺で水タバコをやっていてリラックスした様子だった。
危ないって情報とかもまったく聞かなかったし、
そんな様子もなくむこうから話しかけてきて
『一緒に水タバコやろうよ!』
みたいな雰囲気だった。
ゲートってほどのものもなくて道の向こうから座り込み会場ですよって感じ。
しばらくふらふらしてたら監視員さんみたいな人に話しかけられて、
無表情でこっちに来いとアラビア語で言われた。
見た感じ明らかに政府の人ではなく、座り込みをしているグループの仲間という印象を受けた。
何も悪いことはしてないんだけど無表情なのと有無を言わさぬ態度に驚いたし恐かった。
知らぬ間に自分が入ってはいけないところまで入ってしまっていたのか。
またはカメラを持って入ってはいけないのか。
何もわからなかったけどついて行くしかなかった。
ほったて小屋の事務所の前まで来て英語が少しは話せるひとがでてきた。
その人はまず
『パスポートをだせ』
と言った。
うそなんで?いきなりパスポート?いくらなんでもおかしいよ。
普通は『何しにきた』とか『何処から来た』とかそういうのが先でしょ。
三人ともパスポートはもちろん持ってたしすぐ出せたんだけど、
パスポート持ってかれたら返してもらうまでは身動きとれなくなるから、
ホテルに置いてきたって嘘を付いた。
そしたら
『他にIDはもってるか』
って言うから何でだって聞いてみた。
「パーミット」がなんたらかんたら。
許可証?
この座り込み会場に入る許可証か?
事務所の人も英語が堪能なわけじゃないから少し時間がかかったんだけど、
どうやらカメラで写真やビデオをとる場合には1ドルぐらいの許可証が必要だったんだ。
びっくりさせないでよ。
これもパルミラの石か笑
許可証取ってもよかったんだけど三人ともテンション落ちちゃってそのままホテルに帰った。
だけど次の日なんと彼らは大規模なデモ兼ストライキを起こした。
暴動とかではなくあくまで政治的要求を含むストライキだった。
街中の店はホテルから見るかぎりほとんど閉まっていた。
道路の上にはブロックや土が置かれて完全に封鎖され、
バスはおろか車はアーミーのだけだった。
僕らはというと念のためホテルからは一歩も出ずに一日部屋の中で過ごした。
昼間はニュースを見たり本を読んだりしていた。
ワールドCNNでトップニュースに近い扱いだったからびっくりした。
夜になって三人ともどうにもこうにもお腹が空いちゃって、
ホテルの目の前にあるサンドウィッチ屋さんまで買い出しに行った。
少なくともここはアーミーがすぐ近くに見張りをしてたから安全だった。
店員さんがサンドウィッチを作ってる間オープンエアーの店内にはアラブの音楽がかかってたんだけど、
何だか『カンカン』って不規則な金属音がまじってきた。
おかしいなって思って外見たらデモの実行グループが
鉄パイプを地面にカンカンやりながら行進してるじゃないか!
それまではデモ兼ストライキが自分が今まさに滞在している街で起きていることが
世界のニュースのトップになってるのにいまいち現実味がなかったんだけど、
この鉄パイプのカンカンっていう金属音が俺にリアリティーを与えた。
アーミーもあわててないし身の安全は大丈夫だと思ってたけど恐かった。
これもパルミラの石ですか?
かんべんしてください笑
翌日ストライキは終わり、無事ダマスカスに帰ることができました。