第8室 第1話 押し入れに眠る100万円。
第1話 押し入れに眠る100万円。
~捨てようと思っていた一枚のレコードが、人生を変えた日~
ある日、一人の男性が訪ねて来られました。
年の頃は60代。
手には、少し埃をかぶった段ボール箱。
「父が亡くなりましてね。」
「片付けをしていたら、古いレコードが出てきたんです。」
「どうせ価値なんてないでしょうから、処分しようと思って。」
私は、静かに箱を開けました。
中には、30枚ほどのジャズレコード。
そして、その中の一枚に、目が止まりました。
青いラベル。
見慣れた文字。
BLUE NOTE
まさかと思い、そっと取り出します。
盤面を見る。
ラベルを見る。
そして、デッドワックス(盤の刻印部分)を見る。
そこには、小さく刻まれていました。
RVG
Ear
47 WEST 63rd
思わず、息を呑みました。
「これは、お父様がいつ頃買われたものですか?」
「さあ…。昭和30年代には、もう持っていたと思います。」
その瞬間、私は確信しました。
これは、オリジナル盤です。
しかも、状態も悪くない。
現在の相場を調べると、その一枚は数十万円。
さらに箱の中には、同じような盤が何枚もありました。
結果として、その段ボール箱は、 100万円を超える価値。
を持っていたのです。
男性は、しばらく言葉を失っていました。
そして、小さな声でこう言われました。
「父は、生前、一枚も手放しませんでした。」
「今なら、その気持ちが少し分かる気がします。」
私は思うのです。
お宝とは、高価なものというだけのものではありません。
誰かが、
* 毎月少しずつお金を貯めて。
* 店を何軒も巡って。
* 大切に棚へ並べて。
* 何十年も守り続けたもの。
その時間そのものに価値があるのです。
だから、もし今、押し入れに古いレコードが眠っているなら。
もし、真空管アンプが埃をかぶっているなら。
どうか、捨てる前に、一度だけ見てください。
そこには、思いもよらない価値が眠っているかもしれません。
そして何より「人生を愛した誰かの記憶。」が、静かに眠っているのかもしれません。
知って得する豆知識
高価になりやすいもの
* Blue Noteオリジナル盤
* Prestige初版
* ビートルズ赤盤・黒盤
* 真空管アンプ
* EMT・ガラード・トーレンス
* Western Electric
* JBL初期モデル
押し入れの五つの奥義
1. 押し入れは宝箱である。
2. 古いものほど価値がある場合がある。
3. 「捨てる」は最後の選択。
4. 価値は知識によって見つかる。
5. お宝とは、人生の記憶である。
最後の一文
「押し入れに眠っているのは、100万円ではない。」
「誰かが一生をかけて集めた、ときめきの記憶なのである。」
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第2話「父が遺したBlue Note」
~一枚のレコードが、親子を再び出会わせた日~
第6室 録音 第1話 Blue Noteはなぜ神話になったのか。
第1話 Blue Noteはなぜ神話になったのか。
~一人の男の情熱が、世界を変えた~
1953年。
ニューヨーク。
一人の男が、静かにレコーディングスタジオへ向かっていました。
彼の名は、アルフレッド・ライオン。
ドイツ生まれのユダヤ人。
ナチスから逃れ、アメリカへ渡った男です。
しかし、彼には一つだけ、どうしても忘れられないものがありました。
「ジャズ。」1938年。
カーネギーホールで行われたベニー・グッドマンのコンサート。
その夜、彼は衝撃を受けます。
「この音楽は、自由そのものだ。」そして、その想いは、やがて一つのレコード会社を生み出します。
その名は、 Blue Note Records。
1939年のことでした。
Blue Noteは、なぜ特別だったのか。
当時、多くのレコード会社は「売れる音楽」を求めていました。しかし、アルフレッド・ライオンは違いました。
彼は、ミュージシャンたちにこう言ったそうです。
「君たちの演奏したいように演奏してくれ。」演奏時間を気にしない。
商業性を押し付けない。
納得いくまで録音する。
そして、出演者には正当な報酬を支払う。
現代では当たり前のことかもしれません。
しかし、1950年代、それは革命でした。
だから、ミュージシャンたちはBlue Noteを愛しました。
* マイルス・デイヴィス
* セロニアス・モンク
* アート・ブレイキー
* ソニー・クラーク
* ハンク・モブレー
* リー・モーガン
* ジョン・コルトレーン
彼らはBlue Noteで、最も自由だったのです。
神話を作った四人の男たち
Blue Noteの神話は、四人の男によって作られました。
アルフレッド・ライオン
「情熱。」
フランシス・ウルフ
「写真。」
数々のジャケット写真を撮影し、Blue Noteの世界観を築きました。
ルディ・ヴァン・ゲルダー(RVG)
「音。」
世界中のオーディオファンが憧れる「Blue Noteの音」を生み出しました。
リード・マイルズ
「デザイン。」
Blue Noteのジャケットを芸術の域へと高めました。
なぜBlue Noteは神話になったのか。
それは、音が良かったからでも。
ジャケットが美しかったからでも。
希少だったからでもありません。
Blue Noteは、「人の想い。」が詰まっていたからです。
* 演奏する人。
* 録音する人。
* 写真を撮る人。
* デザインする人。
* そして、それを聴く人。
その全員が、本気でした。
だから70年経った今も、人はBlue Noteを探し続けます。
Lexington。
47West63rd。
New York USA。
ラベルを見つめるたび、私たちは思うのです。
「あの時代に、生まれてみたかった。」と。
Blue Noteが教えてくれた七つのこと
1. 本物は、時代を超える。
2. 情熱は、必ず人に伝わる。
3. 良い仕事は、仲間によって生まれる。
4. 自由は、創造を生む。
5. 芸術は、妥協からは生まれない。
6. 人生は、好きなことに捧げてもいい。
7. 神話は、人が作る。
最後の一文
「Blue Noteは、レコード会社ではない。」
「自由を愛した人々が、この世界に遺した、一つの奇跡なのである。」
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第2話
「Prestigeの夜。」
~なぜあのレーベルには、深夜の匂いがするのか~
第5室 第1話 RVGスタジオの秘密
第1話 RVGスタジオの秘密
~なぜ、あの部屋から名盤は生まれ続けたのか~
もし、ジャズファンに、「一度だけ、過去へ行ける。」と言われたら、私は迷わず答えるでしょう。
「RVGスタジオへ行きたい。」と。
1950年代。
ニュージャージー州ハッケンサック。
そこには、一見すると普通の家がありました。
しかし、そのリビングでは、後に世界中の人々を魅了する音楽が生まれていたのです。
* マイルス・デイヴィス。
* ジョン・コルトレーン。
* ソニー・ロリンズ。
* リー・モーガン。
* ハンク・モブレー。
彼らは、その小さな部屋で演奏しました。
そして、その音を静かに見つめていた男がいました。
ルディ・ヴァン・ゲルダー。
彼は演奏家ではありません。しかし、彼の耳がなければ、Blue Noteの歴史は違ったものになっていたかもしれません。
RVGスタジオには、不思議な空気があったと言われます。
* 高い天井。
* 真空管機器の灯り。
* 巨大なマイク。
* 演奏前の静寂。
そして、演奏が始まると、その空間すべてが一つの楽器になったのです。
私たちは、「Blue Noteの音」と言います。
しかし、本当は、「RVGスタジオの音。」だったのかもしれません。
1960年。
コルトレーンが吹いた音。
1964年。
リー・モーガンが鳴らしたトランペット。そのすべてが、今もなおレコードの溝の中に眠っています。
だからでしょうか。
私たちは今日もまた、RVGの刻印を探し、レコードに針を落とします。
それは音楽を聴くためではありません。
「あの日、あの部屋に流れていた時間。」を聴くためなのです。
知って得する豆知識
RVGスタジオの変遷
第一章
* ハッケンサック(Hackensack)
* 自宅兼スタジオ。
第二章
* イングルウッド・クリフス(Englewood Cliffs)
* 大聖堂のような高い天井。
RVGスタジオ 五つの奥義
1. RVGは録音技師の名前。
2. 最初のスタジオは自宅だった。
3. 高い天井が独特の響きを生んだ。
4. 名盤の多くはRVGスタジオで録音された。
5. Blue Noteの音は、空間そのものだった。
最後の一文
「RVGスタジオ。」それは録音スタジオではない。ジャズの神々が集った、小さな聖堂だったのである。
次回予告
第2話「なぜBlue NoteはBlue Noteの音なのか。」~真空管、マイク、そして静寂が生んだ奇跡~



