行ったことある世界遺産 ブログネタ:行ったことある世界遺産 参加中

若い人の中に「休みをもらっても、やることがない」と言う者が意外に多かったりする。そういう際、俺は屋久島上陸を勧めるようにしている。屋久島へ行って、縄文杉に会って来い…と。

一日中ゴロゴロしているのも、それはそれで悪くはないが、体が動く内はどんどん動かした方が良い。特に若い世代は、見聞を広めるという意味も含めて、旅に出た方が良い。今さら〔自分探し〕でもないだろうが、様々な土地を訪れ、現地の人と交流したり、地元の名物を飲(呑)んだり、食べたりすることは、刺激的だし、とても面白い。旅の醍醐味だ。


俺なども20代の頃は、休暇の度に遠方に出かけたものだ。俺の場合は〔非日常〕を求める旅であった。目標が定まると、日々の労働に遣り甲斐を感じるようになる。路銀確保の手段だと思えば、ツマラナイ仕事にも耐えられる。旅行には結構費用がかかる。予定金額に2万でも3万でも上乗せできれば、旅行中、余裕を持った行動が可能になる。又、旅先では、想定外のアクシデントに見舞われる場合がある。そういう時に財布がカラッポでは、対処の仕様がない。

予算ギリギリの貧乏旅行も魅惑的だが、俺には無理だ。野宿も苦手だし。旅の間ぐらいは、デラックスに過ごしたいという心理が、俺の内面で働いていた。当時の俺はくだらない上にくだらない日常に埋没しており、頭も体も変調をきたしていた。その鬱屈と言うか、反動のようなものが、旅に出ると、溶岩のごとく噴き出すのだった。


俺が屋久島に上陸したのは、今から13年前である。最近はインフレ気味のような感じもするが、当時〔世界遺産〕という称号は、新鮮な印象を帯びていたものである。ある日、テレビの報道番組を眺めていたら「来島者や観光客のマナーが悪過ぎて、屋久島の自然が著しく汚されている」という話になった。キャスターは「このままだと、学術研究者以外の上陸は禁止になるかも知れません」と言って、同話題を結んでいた。

このニュースが、屋久島を目指すキッカケとなった。入島禁止になる前に、噂の縄文杉を見物に行こうという意欲が、俺の中にムクムク湧いてきたのである。まったく単純なものだ。我ながらあきれる。


単細胞だけに行動は早かった。屋久島の観光協会に電話を入れ、宿の確保を済ませると、俺は10万ほどの現金を用意し、最低限の荷物を背負うと、おもむろに家を飛び出したのだった。確か、その年のゴールデンウイークの後半だったと思う。当時の俺は堅気の職業に従事しており、こういう無茶をやっても、充分支えられる経済力を有していたのである。新幹線、特急列車、快速艇、そして、帰りの飛行機と、陸海空を制覇するという豪勢な旅であった。あんな旅は二度とやれまい。

早朝、民宿を出発し、ほとんどノンストップで縄文杉とところに辿り着いてしまった。まるで、何かにとり憑かれたように。全身ずぶ濡れの酷い有様だったが、疲れも寒さも感じなかった。眼前に聳え立つ縄文杉の迫力は圧倒的であった。帝王の貫禄であり、このような大怪物が現実に存在することに、俺は度肝を抜かれ、同時に感激した。素晴らしい経験だった。その後、屋久島の入島に制限が設けられたという情報は聞いていない。