文月某日。動画師Kさんから「『寄生獣』が映画になるみたいだけど、本当ですか?」というメールが届いた。その時の俺は一片の情報も持っていなかったので「わかりません。調べてみます」という返信を送った。
映画化の話は随分前からあったように思うが、いつまで経っても実現しないし、あの企画は流れたらしい…などと、勝手に決めつけていた。どっこい、話(企画)は生きていたのである。ニュー・ライン・シネマが有していた〔映像化の権利〕が、映画を作らない内に期限満了を迎えてしまったのだ。どうして作らなかったのか、理由は不明である。
宙に浮いた権利に日本の映画会社が殺到し、猛烈な奪い合いの果てに、東宝が〔魅惑の果実〕をもぎ取ったというわけ。その光景や経緯を映画にした方が面白いような気もする。
俺の意思などとは、まったく関係なく〔寄生獣プロジェクト〕は動き出したのだ。一旦動き出したものは容易には止められないし、どうやら、実写部分の撮影は既に終了しているみたいである。困難な仕事に取り組んだスタッフとキャストには誠に申し訳ないが、映画版に関してはいかなる期待も抱いていない。期待が大きいと、裏切られた際のダメージが倍化されるからである。ただ、映画版『寄生獣』が〔第二のデビルマン〕にだけはなって欲しくないということは言っておきたい。岩明均が『デビルマン』に触発されて『寄生獣』を描いたのは有名な逸話だが、なにもそこまでならうことはあるまい。岩明先生の意見も聞いてみたいところだ。萬画は萬画、映画は映画と、割り切っておられるのだろうか…。
ドキドキしながら配役表を見せてもらったが、化物中の化物たる〔後藤〕は浅野忠信が演じるらしい。後藤はこの世の阿修羅であり、戦いの権化である。桁外れのアクの強さを発揮して、読者の度肝を抜いてくれた千両役者だ。彼を核に据えて、映画が一本撮れるぐらいである。巧者浅野と言えど、果たして演じ切れるのかどうか。
山崎貴の起用にも疑問を覚える。原作の作風と監督の作風には相当な隔たりを感じるのである。確かに題材としては抜群に面白い。しかし、面白いだけでは、映画にはならない。作り手に勝算はあるのか?自爆か、全滅か。無謀な作戦の末路は悲惨である。奇抜性を求められる殺陣の場面も大変だし、心理描写はもっと大変である。仕損じれば、またぞろ〔笑えない喜劇〕の誕生となる。不安のタネは尽きない。俺の望みは、映画版ではなく、連動的に制作されるという動画版に託すとしよう。