『SHORT PEACE―ショート・ピース』は2013年に公開された作品である。第1話【九十九】第2話【火要鎮】第3話【GAMBO】第4話【武器よさらば】の計4篇で構成されるオムニバス映画だ。オープニング・アニメーションも加えると、計5篇ということになるのだろうか。物語性よりも映像性を強調した内容に仕上がっていた。

オオトモ・カラー(そんな言葉はないが)の濃い映画でもある。第4話【武器よさらば】は大友克洋の萬画を原作としたSF活劇。第2話【火要鎮】は大友さん自らが、脚本と監督を手がけている。


俺も大友ワールドには度肝を抜かれた方である。萬画史上に現れた〔最後の天才〕ではないかとさえ思っていたし、今でもその考えは変わっていない。そんなわけで一時期傾倒していた。長篇よりも、短篇に惹かれた。彼の作品は、劇画と言うよりも、限りなく映画に近かった。紙の上に〔映画を描く〕人だと思っていた。これほどの才能の持ち主だから、映像分野に進出したとしても、まったく不思議ではない。

不思議ではないが、大友さんには画業のみに専念して欲しかった…という気持ちも偽りのないものである。そう。もう一人の鬼才、諸星大二郎のように。大友さんが動画に費やしたエネルギーを、短篇の創作に注ぎ込んでいたら、相当数の佳篇名篇(怪篇含む)が生まれていたに違いない。まあ、絵師たるものの究極の目標は〔自分の絵を動かすこと〕なのだろう。それに懸ける野望や情熱は誰にも止められない。


第1話【九十九】は妖怪映画風の導入だが、実際はユーモラスなもの。壊れた傘や痛んだ着物が、モンスター化し、主人公を夢幻の世界へと引き擦り込む。が、彼は意外な方法で、怪物群に対抗する。対抗すると言っても、殺し合いが始まるわけではない。血が噴き出したりとか、首が刎ねられたりとか、そういう方面に話は転がらず、きわめて平和的な解決を迎えるのだった。主人公の正体が謎のままなのも粋である。


第2話【火要鎮】は江戸の再現を目指した意欲作である。話そのものは退屈だが、火消しの活動内容を具体的に描写してくれただけでも、この作品の価値があろうというものだ。彼らの仕事は、鎮火ではなくて、破壊に重点が置かれていた。どうやって延焼の拡大を食い止めるか?判断力と実行力が求められる。木造都市にとって、業火はまさに悪魔の化身である。火消しは江戸のデーモンハンターだったのだ!


第3話【GAMBO】は食人鬼と巨大熊が激突する伝奇バイオレンスである。こういう法螺話は、動画が最も得意とする領域である。中篇、或いは、長篇に膨らませようと思えば膨らませることも可能だろう。しかし、あえて膨らませなかったところにこの作品の価値がある。展開が早過ぎて、損をしている部分もあるが、圧縮された魅力を感じる。


第4話【武器よさらば】は、兵器処理班(なのか?)と、自動攻撃(反撃)能力を備えた化け物戦車との戦いを描く未来篇である。闘争の舞台は瓦礫の山と化した都市(多分東京)だが、どうして廃墟になったのかはわからない。説明が省略されている分、想像の翼を広げる余白がある。未曾有の大災厄が日本を襲ったらしい。終盤に噴煙を吐く富士山を映し出すことによって、第1話【九十九】との繋がり(連結)を示している。