週末なにした? ブログネタ:週末なにした? 参加中

卯月某日。最寄り駅の【藤野】を下車した俺は、陣馬山の登山口を目指して歩き始めた。時計は〔9:00〕を示していた。藤野駅から、登山口まで送ってくれるバスが出ていたが、時間はたっぷりある。自分の足で行くことにした。金子の節約にもなるし。

幸い天気には恵まれた。空は雲片が幾つか浮かんでいる程度である。おそらくこれが、30代最後の山登りになるだろう。もしかすると「人生最後の山登り」になるかも知れない。何をバカなと笑われそうだが、何事もこれが最後と思えば、刹那刹那の価値や意味が全然違ってくるのである。そのようなことを考えながら、俺は歩き続けた。

考えに沈むのは良いのだが、目印となる踏み切りを通り過ぎてしまったのは失点だった。慌てて引き返した俺の背中に早くも汗の玉が滲んでいた。スタート地点に辿り着かないことには、話にもならないし、山登りそのものが始まらない。前途多難の様相が漂い出していた。

踏み切りを渡って、長いトンネルを抜けると、俺の視野に穏やかな山村風景が広がった。なにやら、俺の郷里を想起させる景色である。魔都東京の近辺とは思えないのどかな雰囲気である。道端に建っている酒屋兼雑貨屋さんも、俺の郷愁を誘ってくれた。どんなに誘われても、かの土地に戻ることはないのだが…。とは言え、湧出する感情を制御するのは難しい。俺は湧き出るままにしておき、黙々と歩き続けた。


竜の絵が描かれたTシャツと洗い晒しのジーンズ。俺の衣装は仕事の日も遊びの日もほとんど変わらない。ただ、靴だけは普段のものではなく、野外活動用の頑丈なやつを履いていた。山の中で足をやられたらどうにもならないからである。

背負い袋には、カロリーメイトとペットボトルが入っている。これは非常用。今日の昼食は山頂で食べるつもりであった。陣馬山の頂上では【信玄】【清水】【富士見】の三茶屋が店を構えているのだ。信玄は土日と祝日のみ営業している。富士見は土日と祝日営業。平日は不定休。清水は毎日営業している。但し、悪天候の場合は三軒とも店を閉めるそうである。当然の措置と言える。荒天では商売にならない。

俺などもつい怠りがちのところがあるのだが、山登りの際は食料と水の持参は必須である。高かろうが、低かろうが、山は異界と考えておいた方が良い。どんなトラブルが起きるかわからない。登るだけではダメである。無事に帰ってくることも、山登り(冒険)に含まれているのだ。


登山口到着は〔10:00〕頃であった。俺が登ろうとしているのは『一ノ尾尾根コース』と呼ばれるもの。ここまで来れば、もう迷うことはない。順路に従って、歩き続ければ、自動的に山頂に行き着くはずである。あとは気力と体力の勝負になる。手元の資料には「山頂まで、約1時間40分のコース」と、記されていた。さあ、行こう。俺は若干の空腹を感じながら、登山を開始した。山頂には三茶屋と白馬像が待っている。