夜更かしはなるべく控えているが、昨夜の酒は妙に旨く、そのまま日をまたいでしまった。午前0時になると、NHK第一の〔ラジオ深夜便〕が始まる。冒頭に番組内容の紹介があるのだが、午前1時代に朗読劇が放送されると知り、今夜はこれを聴かないと眠れないなと思った。

藤子・F・不二雄原作の『おれ、夕子』である。石田太郎氏(本年急逝)も出演されているとわかり、ますます眠れなくなった。

『おれ、夕子』は、今年の6月29日に高岡市生涯学習センターで公開録音されたものである。当日は『カンビュセスの籤』と『間引き』の二怪作も上演されており、こちらは、別の番組で放送された模様である。

その際割愛された『おれ、夕子』が〔深夜便〕の枠内に登場したのだ。幸運であった。事前情報を得ていたわけではなく、偶然の巡り合わせであった。もしかして、石田さんが招待してくれたのかな?と、刹那思ったが、無論そんなことはありえない。


ニュースの後、芝居の幕が上がった。藤子先生のSF短篇を、朗読という形で表現しようという面白い試みである。ラジオドラマとしても充分楽しめる。主人公の佐藤弘和を松田洋治が演じ、物語のカギを握る夕子の父親を石田さんが演じていた。声を聴く限りでは、元気そうだったし、三ヵ月後に起きる奇禍の予兆も感じられなかった。

石田さん自身、まだまだやれると思っていたに違いない。だが、失われた命は二度とは戻ってこない。物語が〔蘇生―よみがえり〕を題材にしていたのが、皮肉と言えば皮肉であった。

萬画から朗読へ。なかなか巧みに変換されていた(脚色は福田卓郎)。こうなると『カンビュセスの籤』と『間引き』も聴きたくなってくる。そこで、NHKさんにお願いしたい。石田氏の追悼企画として、三篇を一挙に放送してもらえないだろうか。その時は素面で聴かせていただきます。