師走某日。商店街の【ラクワナ】に寄り、待望の鍋を食べる。用意されているメニューは二種。モツ鍋にするか、ちゃんこ鍋にするか、直前まで迷っていたが、その日は後者を選んだ。ちゃんこの支度が整うまでの時間を、俺はスリランカ産のビールを呑んで過ごした。ライオンなんやらという銘柄のビールである。
日本のビールよりも数段コクがあり、ずっしりとした呑みごたえが楽しめる。かの国の人は、毎晩こんなビールを呑んでいるのかと思うと、羨ましくなってくる。心地好く酔っ払ってきたところに、マスター特製のちゃんこ鍋がドカンと運ばれてきた。
見た目も旨そうだし、実際にも旨かった。熱々を食べる。各食材も美味しいが、スープそのものが美味しい。今週のランチはこのスープを使った饂飩だそうである。こちらも食べたい。どこで修行を積んだのかは知らないが、マスターの味つけは日本人の味覚にぴったり合っている。同業者の評価も高く、隣りの居酒屋さんから、定食の注文が入る場合もあるみたいである。
鍋の中身を全て食べ尽くすと、マスター自らが卵雑炊をこしらえてくれた。まったく鮮やかなものだ。流石に本職という感じがする。ひとつひとつの動作が俺の食欲を刺激する。作りたてを荒々しくかきこむと、豊かな味わいが口内に広がった。
熱い料理は熱い内に食べなくては意味がない。モタモタしていると、折角の好意がぶち壊しになる。
久々の鍋を堪能し、勘定の方はと言うと、2千円でお釣りがきた。新たなオアシスの発見を俺は実感していた。本来、流行るべきはこういう店だが、商売を軌道に乗せるのは並大抵のことではない。競合店も多いし、宣伝も充分行き届いているとは言えない。応援してあげたい気持ちはあっても、力もなければ金もないのだった。情けないねえ。いよいよとなったら、マスターと一緒に駅前でチラシでも配るか…。