〔地獄の帝王〕の異名を持つエスタークが初登場したのは『ドラゴンクエストⅣ』だったのではあるまいか。鎧武者を連想させる外見。両手に握った抜き身の巨刀が、恐るべき凶暴性と戦闘性を強調している。まさに化物中の化物であり、シリーズを代表する傑作モンスターである。

エスタークの出番は第五章の後半に用意されている。エスタークを倒してもゲームは終わらない。最終決戦の場は、魔王ピサロが本陣を構えるデスマウンテンとなる。人類皆殺しを目論むピサロは〔進化の秘法〕を駆使し、驚異の成長を遂げる。

ピサロにはピサロの論理があるのだが、こちらとしても「はい。そーですか」と、滅ぼされるわけにはいかない。結果、激しい戦いが勃発する。ピサロはデスピサロと名を変えて、我々の前に禍々しい姿を現わす。最初は「エスタークそっくり」の格好をしているが、攻撃を加えると、右腕左腕の順番で吹き飛び、最後に頭が砕け散る。だが、デスピサロは死なない。魔神の本体は〔外装〕の奥に隠れているのだ。進化の極点に到達した瞬間、人類の命運を懸けた〔真の戦い〕に突入する。

決戦中、動画的な趣向も盛り込まれており、当時(1990年発売のゲーム)としては画期的演出であった。鳥山明のデザインも素晴らしく、その後は、どんなモンスターが出てきても吃驚しなくなった。エスタークとデスピサロという名悪玉二体に遭遇できるだけでも『Ⅳ』を遊ぶ価値があるのではないかと、俺は考えている。


二刀流の大怪物エスタークは、続く『Ⅴ』でも意外な形で出演して、ファンを喜ばせた。ゲームのモンスターにこれほどの人気が集まるのは、俺達がウルトラ怪獣の人形や図鑑を揃えた感覚に似ている気がする。エスタークは『ジョーカー2』にも起用されており、迷路状の洞窟内にその巨体を発見した時は、まるで、旧友に再会したような懐かしさと、旧敵に巡り会ったような興奮を覚えた。

クリア後は〔彼〕と戦う事が可能になる。最初の対決は当方の惨敗に終わった。以降〔エスターク討ち〕を目標にして、これまで戦備を整えてきたが、今朝方、満を持して、二度目の対決―雪辱戦に臨んだ。前衛部隊と待機部隊、全員を巻き込む総力戦となった。多少肝を冷やす場面もあったが、今度はこちらが勝ちをおさめた。


戦闘後、エスタークが「仲間に加わる」と、言い出したので驚いた。どうやら、知らぬ間に獲得の条件を満たしていたらしい。ちょっと困惑している。何故なら、エスタークとは、あくまでも〔永遠の好敵手〕であり、俺の中では〔最後に剣を交える相手〕としてしか考えていなかったからである。そのエスさんが味方になってしまったら、これから〔誰〕と戦えば良いのだろうか。目的を失ったゲームは飽きるのも早い。あるいは、彼を上回る実力者が、この魔島の何処かに潜伏しているのだろうか。流石にそれはなさそうだし、今のところ、宿敵に相応しい候補者は見つかっていない。