最終回が印象に残っているアニメ、ドラマ ブログネタ:最終回が印象に残っているアニメ、ドラマ 参加中
『解散無用』は1977年11月に放送された作品である。俺が観たのは平日昼間の再放送だが、テレビ時代劇の枠をぶっ壊すような猛烈な内容に度肝を抜かれたものである。寅(藤村富美男)の次に江戸の暗殺界を牛耳るのは誰か?闇の玉座を巡って、仕置人対仕置人の激しい抗争が繰り広げられる。

業界制圧を目指す辰蔵(佐藤慶)と悪徳同心諸岡(清水紘治)の酷薄コンビが、バケモノじみた個性を発揮して、画面の緊張感を高めている。新組織〔辰の会〕の設立を画策する辰蔵は、最高の戦力―念仏の鉄(山崎努)を陣営に加えようと、卑劣な手段に訴えるのだった。

〔辰の会〕は、首領の性格が反映した地獄の軍団である。悪党であろうが、善人であろうが、カネさえもらえば関係なしに殺戮する。それが〔辰の会〕の方針なのだ。逆らった者には恐ろしい制裁が待っている。仕置人は正義の味方ではない。血まみれの殺人者である。そんな事は言われなくてもわかっている。わかってはいるが〔外道〕に堕ちる事だけはなんとしても避けたい。自分の信条を優先するか、仲間の命を助けるか、鉄は過酷な選択を迫られ、大いに苦悩するのだった。


名優(怪優?)山崎が鉄の複雑心理を巧みに表現している。表情から動作に至るまで、念仏の鉄そのものに成り切っている。山崎鉄は、全41話を通して、実質的主人公として活躍している。その証拠に…というわけでもないのだが、エンド・クレジットの表示も、鉄は別格扱いになっている。凄味も貫禄もあるし、同時にユーモラスなところもある。本当に素敵な俳優さんだと思う。俺は『新仕置人』を介して、山崎努の存在を知り、以降、彼の出演作品を追いかける事になるのであった。


山崎鉄に対抗する佐藤辰蔵の邪気も相当なものだ。佐藤さんにはこういう曲者役がぴったりである。鉄も巳代松(中村嘉葎雄)も、辰蔵の毒牙の犠牲となった。前者は利き腕を潰され、後者は廃人にされてしまった。敵対勢力は徹底的に排除粉砕するのが、野望屋辰蔵のやり方らしい。主力の二人が倒れ、念仏チームは壊滅に追い込まれたかに見えるが、そうではない。まだ、もう一枚カードが残っている。あの鉄に〔最後の切り札〕と言わしめた男。地上最強の昼行灯―我らが、スーパー(アンチ)ヒーロー中村主水(藤田まこと)の出番である。

憤怒の炎を内面に燃え立てさせながら、主水は辰蔵邸に単身斬り込む。諸岡も懸命に応戦するが、鬼神と化した主水の敵ではなかった。主水は諸岡の腹に刀を突き刺したままの状態で走り出し、玄関の戸板をぶち破って、邸内に侵入すると、辰蔵の護衛部隊を片っ端から斬り伏せる。

何度観ても素晴らしい殺陣であり、観る度に興奮する。脚本も面白いし、映像も良い。スタッフとキャストの歯車が円滑に噛み合った出色のエピソードに仕上がっている。シリーズの進化が極点に到達した瞬間として、永遠に記憶されるだろう。

〔奇跡の領域〕に踏み込んだ以上、これに勝る収穫は望めない。シリーズの勢いに陰りが見え始めたのは必然的な成り行きであろう。後年、山崎努は〔鉄の復活〕を打診されたそうだが、依頼を拒んでいる。当然の回答ではあるが、勇気のいる判断でもある。このあたりにも、山崎さんの演技者としての美学と信念を感じさせる。