平井和正原作のSF活劇である。SFと言っても、作っているのは東映だから、内容的には相当泥臭い。だが、この泥臭さが独自の個性にもなっており、食べ慣れると案外美味しい。我らが千葉真一が、狼男という怪役に挑んでいる。
ありったけの材料を―相性や調和も考えず―大鍋にぶちこめるだけぶちこんだ豪快料理に仕上がっている。良識派を挑発するかのような俗悪場面や残虐場面が、随所に仕掛けられており、ダサクを大好物にしている俺でさえ、後半に展開される拷問場面には気分が悪くなったぐらいである。この場面だけは二度と観たくないというのが、正直な感想である。
作り手としては「国家の凶暴性」を表現しようと、敢えて過激な描写を試みたのかも知れないが、ここまでやる必要があったのかどうか、疑問が残る。雰囲気的には、医療映画の手術場面に近いのだが「麻酔がかかっていない」という設定が、吐き気を倍化させるのである。ガラス張りの監視室から、地獄の光景を平然と眺めている連中はまさに悪魔であり、目的の為には手段を選ばない「奴ら」の冷酷さに寒気を覚えた。奴らの大将格として登場する待田京介も不気味な迫力を発揮していた。
暴力団でもなければ、秘密結社でもない。本当に怖いのは「国」であるという結論には慄然とさせられる。馬鹿馬鹿しさを突き抜けた「超リアルの世界」が、ここにはある。観るに耐えない駄作と決めつけるのは自由だが、核心に触れているという意味では、賢しら面が撮った自称芸術映画よりも、余程説得力がある。
『ウルフガイ』がどうしてDVD化されないのか、前から不思議に思っていた。相応の理由がある筈である。調べてみると、ひっかかっているのは、千葉ちゃんの拷問場面ではなくて、人狼一族の虐殺場面であるらしい。物語の肝となる部分であり、これをカットしたら映画そのものが成り立たなくなる。切ろうにも切れないのだ。
危険要素を多分に孕んだ爆弾みたいな映画を、国立機関たるフィルムセンターが保管し、こうして上映会を開いているというのも奇妙な現象である。
会場となる大ホールの収容人数は310名。当夜の座席の埋まり具合は、三分の一程度であった。映画狂Y氏の姿も見えたが、何やら難しい顔をしていたので、声をかけるのは控えた。喉がカラカラ。帰宅後に呑んだハイボールの旨かったこと!