『真マジンガー』DVD第8巻には、第21話『遺恨!くろがね屋の一番長い日 後編』第22話『夢幻!眠れる繭のあしゅら!』第23話『接近!機械獣あしゅら男爵!』の、計三篇が収録されていた。いよいよ、物語は大詰めを迎えようとしている。
第21話では、光子力の源―ジャパニウム鉱石の正体が明らかになる。原作のあしゅら男爵の台詞を信じるならば、光子力は「原子力の数百倍」という途轍もないエネルギーらしい。機械獣と光子力が組み合わされば、地上最強、無敵の軍団の編制が可能になるのだ。Dr.ヘルが世界征服の大野望を夢見たのも、狂気の沙汰とは決めつけられないのである。このようなものに接したら、誰でも狂ってしまう。
兜十蔵も、光子力に魅せられた一人であり、彼がヘル化しても、全く不思議ではなかった。或いは、ヘルの暴走が、十蔵を正気の世界に繋ぎ止める鎖の役割を果たしたのかも知れない。ヘルと十蔵を、激しく反発し合う対極キャラクターとして配置したのが、今川監督の工夫であり、物語の面白さを倍化させている。これほどに老人が活躍する動画も稀であろう。それにしても、元気な爺さんたちである。
第22話は、総集篇的な内容である。マジンガーの戦いの軌跡や複雑化した人物関係の整理が行われている。主役級のキャラクターが続々と登場する大所帯であり、この段階で冷却期間を設けるのも、悪い発想ではない。決戦前の一休みと言ったところだろうか。同時に疲労が溜まっている制作陣の休息も兼ねているとも考えられる。監督たる者、常に全体に神経を配らなくてはならない。その意味では、巨船を操る船長のようなものだ。船長が無能だと、船は航路を誤ったり、座礁したりする。危険や事故を未然に防ぎながら、目的港に船を導かねばならないのだ。
大変な仕事だし、課せられている責任も重い。差し出口だが、責務に見合う報酬が支払われている事を祈りたい。監督も人間である。生活基盤がグラグラでは、次回作の構想も湧かないだろう。今川さんクラスだと、もしかして、そんな心配は要らないのかな?その辺りの業界事情は、素人に過ぎぬ俺には皆目わからない。
物語は再び加速を始める。最高水準の機械獣を得たあしゅら男爵は、宿敵兜甲児に果し合いを申し込む。倒しても倒しても生き返るあしゅら男爵だが、彼には「自殺の自由」さえ持っていない事が、第23話で判明する。
永井豪は『デビルマン』の中で「阿修羅地獄」という恐ろしい言葉を使っているが、彼こそは、阿修羅地獄の体現者と言えるだろう。下等生物と侮っていた地球人類の子孫―Dr.ヘルの傀儡と化し、身を粉にして働く彼の姿は哀れみを誘う。過酷な運命に翻弄され、刃向かう事も、死ぬ事も許されない。まさに生き地獄である。この戦いの最大の被害者は彼ではあるまいか。今回の決闘騒ぎも、甲児ではなく、あしゅらの方を応援したくなるぐらいだ。仮に勝ったとしても、新たな辛苦が彼を待ち受けているに違いない。阿修羅―男爵の―地獄に終わりは無いのだ。
23話には、立体映像のヘルが、十蔵の墓前に線香を供えるという仰天場面が用意されている。流石は天才と称えるべきなのか。日本の墓参作法まで知っているとは大したものである。ところで、ヘル翁って、何処の国の出身なのかな…?