「フィラデルフィアの怪実験」は、結構有名な都市伝説らしい。時は1943年。場所は海軍工廠。駆逐艦エルドリッジを「レーダー上から消す」という史上空前の試みである。当初、実験は成功したかに見えたが、結果的には大失敗であった。

強力磁場の影響なのか、エルドリッジは遠方の海上へと「瞬間移動」してしまい、その数分後に「再び工廠に戻ってきた」という。エルドリッジには大勢の乗組員が乗艦しており、想像絶する奇現象が彼らを襲った。ある者は発狂し、ある者は発火し、ある者は透明化し、そして、ある者は甲板と融合してしまった…そうである。

手元の指南書兼解説書を信じるならば「エルドリッジの惨劇」は詐欺師まがいの人物が捏造した法螺話であり、デタラメの何物でもないらしい。エルドリッジを舞台にした軍事実験が行われたのは、どうやら本当のようだが、内容は全く異なり、長距離テレポートもなければ、連動発生した異常現象も「全部ウソ」だという。

この種のオカルト系与太話を好む俺としては、興味を粉砕された形だが、まあ、そうでしょうね。恐ろしいのは、ウソが勝手に動き始め、独立した生命体の如く、成長したり巨大化したりする点だろう。フィラデルフィア事件に限らず、偽情報には幻惑の効果を帯びている危険性があるから用心が必要である。


「フィラデルフィアの怪実験」を題材にした映画が、1984年に公開された『フィラデルフィア・エクスペリメント』である。近所のレンタル店の「SF棚」にタイトルを発見した時には驚喜したものだ。何処から流れてきたのかはわからないが、思わぬ場所に思わぬ映画が隠れていたりするから気が抜けない。俺が借りる前に他店に流れてゆく場合もあるのだろう。映画との邂逅は大切にしたい。次にいつ会えるか、予測できないし、これが最後―もう二度と会えないかも知れないからだ。


都市伝説と時間跳躍を巧みに組み合わせた面白い映画であった。第一候補のジョン・カーペンターが演出を担当していたら、もっとアクの強い作風になっていたような気もするが、これはこれで悪くない。特に前半が良い。後半はやや盛り上がりに欠けるのが残念だ。暴走したテクノロジーが人類を破滅の危機に追い込むという展開は、SF映画(或いは、小説)永遠の主題であり、それを阻止しようと動き出すところに、活劇が生まれ、山場や見(観)せ場が築かれるのだ。


映画の方の危機は回避されたが、俺達が住む世界の方はどうだろうか?事態は収束も解決もしていないのに、視線を逸らせよう逸らせようと必死である。誰がコントロールしようとしているのかは不明だが、さしもの俺もそこまで愚かではないし、この期に及んで、幼稚な隠蔽を弄する神経が理解できない。

翻って、地震が起きようが、事故が起きようが、何ひとつ進歩しない一部アホ面の皆さんも、そろそろ真剣に考える時期にさしかかっていると思うのだが、未だ気配すら感じないのはどういう訳なのか。ニッポンはSF以上にSF的な国なのである。