大門一三(山形勲)率いる近畿商事は「次期戦闘機」を巡る企業間戦争に突入していた。権謀術数が渦巻き、毎夜実弾(賄賂)がばら撒かれ、戦況は混迷を深めていた。そんな中、この戦いを勝利に導いてくれそうな男から履歴書が届いた。
元大本営参謀―壱岐正(仲代達矢)である。大門社長としては、どうしても陣中に加えたい戦力である。彼の履歴書には前代未聞の内容が含まれており、まるで、果たし状か、挑戦状である。普通なら破り捨ててもおかしくはない。だが、そうしなかったところが、大門の企業家としての度量であり、才覚なのである。一時的な感情や怒りに流されて、大魚を釣り逃すような愚かな真似はしない。
ライバル社である東京商事辺りに召し抱えられでもしたら大変である。怪物鮫島(田宮二郎)と組まれたら厄介だ。今にして思えば、敵軍に飛車を渡すぐらいなら「自陣で飼い殺した方が良い」という巨人軍的発想も働いていたのかも知れない。
面接の際の「あなたの作戦能力を企業活動に生かしてもらいたい」という口説き文句は、事前に用意しておいたものであろう。大した役者である。とりあえず、入社させてしまえば「あとはなんとでもなるさ」と、密かに考えていたのではないか。実際、そうなったしね。大門自身が謀略に長けた策士なのだ。又、その程度の芝居や演技ができなければ、組織の大将など、とても務まらないのだろう。名優大門が真に求めていたものは、壱岐の経歴であり、地位であり、人脈であった。
国家だの政治だのが絡んでくる商談は、それらが強力な武器として、効果を発揮するらしい。本来重視されるべき、商品(戦闘機)の性能や優秀性は戦闘の中途で虚空に消し飛んでしまっている。会合や談合も結構だが、売る側も買う側も会う度にカネの話ばかりしている。特に後者は「国の守り」にも「国の将来」にも、如何なる興味も持っていない様子である。カネをくれるのなら、邪神であろうと、悪魔であろうと、まったく構わないという節操のなさだ。そのような、エリートと呼ばれる人たちの感覚や習性を、山本監督はマンガ的とさえ言える演出法で痛烈に描き出している。これは大喜劇である。それも毒と欲に染まった醜悪な喜劇である。
もし「原発の建築」に関しても、同じような調子で決定されていたとしたら…想像するだけでも恐ろしいし、全身に虫唾が走り抜ける。滅びるには、滅びに至る理由が隠されている筈だ。日本全土が不毛地帯と化しても、恐らく連中は反省も後悔もしないだろう。真っ先に海外脱出を果たして、移住先で類似行為を繰り返すだろう。知らん顔と記憶喪失が奴らの得意技だ。害獣は死ぬまで害獣なのである。