佐分利信、三船敏郎に続いて、第三の怪物―片岡千恵蔵が登場する。千恵蔵が演じるキャラクターは「政財界の黒幕」である。人間社会の表と裏を自在に行き来する鵺的な人物であり、東西の竜虎―二大組織の大将を同じ場所に招待できるのは、多分この男ぐらいだろう。何がそんなに凄いのかはわからないが、どうやら、かのぬらりひょんは「日本の恥部」に精通しているらしい。相手が誰であろうと―即座に「爆弾」を作動させて―敵対者を破滅に追い込む事が可能らしい。故に何者も迂闊には手が出せないのである。世の中には恐ろしい人がいるものですね。
御大の出演は第3作(完結篇)が初めてだが、キャラクター自体は第1作から登場しており、第1作と第2作では、内田朝雄がこの人物を演じている。こういう事をするから、無用の混乱が生じるわけだが、東映映画はある意味「何が起きても不思議ではない」ので、この程度で驚いてはいけないのだ。俺も修行が足りんようだ。
企画者は、完結篇の目玉のひとつとして「御大の出馬」を発案したのだろうが、佐分利と三船に匹敵するキャラクターが見つからなかったのではないか。かと言って、一から作り直す時間もない。ぬらりひょん役の交替は思案の果ての「苦肉の布陣」だったのかも知れない。あくまでも想像ですけど。難役を御大は流石の貫禄で乗り切っている。ぬらりひょんの介入により「首領の玉座」を巡る抗争は、複雑化を極め、物語に重層的面白さを加える事になった。作戦成功。内田さんの実力も侮れないし、俺も大好きだが、役者の格としては、千恵蔵の方が上なのかな…。
『首領』シリーズは抜群の安定感を誇っているが、中島監督の技量が大きく貢献している事は言うまでもない。三巨頭の魅力を引き出すのと同時に、巡洋艦クラスの個性も巧みに生かしており、映像の安っぽさを忘れさせる大型梟雄劇を構築している。脇役陣の中では、菅原文太の怪演と高橋悦史の力演が印象に残っている。
西の虎が、宿願成就を眼前にして落命を遂げる―武田信玄みたいだ!―場面は、このシリーズ最大の見せ場であろう。是非、御自分の眼で確かめていただきたい。まさか、女子学生に貰ったお菓子に「毒」が含まれていたわけではないよね?
■第1作『やくざ戦争 日本の首領』 1977年1月22日公開・上映時間132分
■第2作『日本の首領 野望篇』 1977年10月29日公開・上映時間141分
■第3作『日本の首領 完結篇』 1978年9月9日公開・上映時間131分