子供の時、ピザという食べ物がどういう食べ物なのかわからなかった。だから、星新一の随筆『ピザ』を読んでも、具体的なイメージが湧いてこなかった。星先生はピザを「イタリー風お好み焼き」(☆)と、簡潔に紹介している。流石にお好み焼きは知っていたが、味の想像までには至らなかった。どうやら、外国にもお好み焼きに似た食べ物があるらしい…その程度の認識であったと思う。

星先生は食品の描写に余り関心がないらしく―その気になれば、いくらでも書けるのだろうが―それ以上の説明を省いている。先生の主眼は仲間との交流に置かれており「味はその次」とさえ言い切っている。先生にとっては「安心した雰囲気」の方が重要なのである。核心に触れた鋭い意見であり、俺も賛同したい。俺は鍋物が大好きだが、不愉快な連中とは絶対に囲みたくない。程度の低い会話は、食欲を減退させるし、座も料理もぶち壊しになってしまう。もし、あなたが、楽しい酒宴や会食を演出しようとするのなら、出席者は慎重に選ぶ事をお勧めする。


随筆の中に「彼(小松左京)と私のピザを食っているところをグラビヤにのせることにした」話が出てくる。この時に撮ったと思われる写真が『作家の酒』(平凡社刊―コロナ・ブックス)という本に掲載されている。1973年に撮影したもの。

1973年と言えば、特撮巨篇『日本沈没』公開の年である。映画は大ヒットを記録。小松先生の絶頂期と言えるかも知れない。グラスを差し出す星新一とピザを食べながらワインを注ごうとしている小松左京―日本SFの重鎮二人を一画面に捉えた貴重な作品である。食卓を占領する「四角いピザ」に時代を感じる。当時は「四角」が主流だったそうである。興味のある方は書店か図書館で探してみてください。


☆因みに池波(正太郎)先生は、ピザを「西洋のどんどん焼き」と、表現している。