『ソイレント・グリーン』(1973年公開)は未来予測系の映画である。

輝かしい夢の未来ではない。荒廃と退廃に彩られた絶望的未来だ。

格差と差別が極点にまで達した世界。まさにこの世の地獄である。

富裕層は冷暖房が完備した豪邸に住み、毎日旨いものを食っている。

一方、貧乏人は屋根さえも得られず、路上生活を強いられている。

時折「ニッポンにそっくりな場面」が現れ、戦慄したり、愕然となったり…。

結構当たっているのである。優れた予言映画として再評価すべきだ。

上流階級は別として、未来人類は酷い飢餓に悩まされている。

下流階級の主食は「ソイレント・グリーン」である。

大企業ソイレント社が開発、製造、配給を手掛ける下層向け食品である。

画面で判断する限り、とても食欲が湧くような代物ではない。

ふと、安物の健康食品で糊口を凌いでいた時期を思い出した。

人間は食わなければ死ぬ。贅沢は許されないのだ。生き延びる為には、レッドだろうが、グリーンだろうが、我慢して食わなければならない。

この期に及んで「捕鯨反対云々」を叫んでいられたら、大したものである。

ソイレント・グリーンには、ある秘密が隠されている。

ソイレント社としては、絶対に外部に漏らしてはならない秘密である。

ソイレント・グリーンの秘密を探ろうとする者には刺客が送り込まれる。

「秘密」を「大嘘」に言い換える事も可能である。映画後半の展開に対して「そんなバカな」と笑い飛ばす人もいるだろうが、俺にはそんな余裕はない。むしろ「記録映画を観ているような気分」に襲われた。これまでの人生の中で、特権意識の塊みたいな連中(大抵アホ面)が「平然と嘘をつく場面」を幾度も目撃してきたからである。


御大チャールトン・ヘストンが殺人課所属の敏腕(らしい)刑事に扮している。

この男、極限生活に疲れ果てたのか、品性も礼節も摩滅してしまっている。

観る者の神経を逆撫でするような不快な役作りが素晴らしい。天邪鬼好みのキャラクターである。大雑把な演技が失笑を誘うが、活劇場面の迫力は流石である。

『ソイレント・グリーン』の世界には「安楽死施設」が存在する。

自殺が奨励される社会。どうやら、人類は終焉段階に突入したらしい。狂った描写の数々が、ヘストン刑事を「地獄の中枢」に赴かせる起爆力になっている。