先般。田中光二の短篇集『最後の障壁』(徳間文庫)を読み終えた。
表題作を含む計六作品が収録されている。
UFO、闇社会、サイボーグ、幽霊飛行機、ウイルス、超能力…。
どんな素材でも適確に調理してしまう田中コックの腕前が鮮やかである。
小説も映画も面白いのが一番である。俺が求めているのはそれだけである。
文学性だの芸術性だの、難しい話題や理屈は俺の頭には向いていない。
娯楽性に富む田中ワールドは、俺にとって、最高の御馳走なのである。
物語の展開にも無理がない。あれよあれよと言う間に引き込まれてしまう。
相当量の情報が詰め込まれており、読んでいると、賢くなったような気がする。
この短篇集も読了までそんなに時間は要さなかった。
面白さは、読書スピードを加速させる働きを有している。
ツマラナイと途端に遅くなる。物語半ばで投げ出す場合も結構ある。
俺は田中作品と相性が良いらしく、今のところ、途中放棄は一度もない。
田中光二は量産型の作家でもある。とにかく沢山書いている。収集するだけでも大変である。屋根裏部屋の本棚には、各地で購入した品が収納されている。せっせと読まなくてはならない。読みたい本があり過ぎて困る。時間が全然足りない。
今回の収穫は『最後の障壁』『閉ざされた町』『孤独の性餐』の三作である。
『最後の障壁』は先月紹介した『ブルークリスマス』にそっくりなので驚いた。
奇しくも、発表は公開と同じ年である。この事実をどう捉えれば良いのか。
こちらは、ブルーならぬ「レッドクロス」が物語を動かす鍵になっている。
長篇に仕上げる事も可能だが、世界の広がりを感じさせる幕切れも悪くない。
『閉ざされた町』も中々凄い。虚構をぶち抜いて、現実に肉迫している。
体制や報道機関が平気で嘘を並べる場面には寒気と戦慄を覚えた。
次に特殊部隊の火炎放射器に焼き殺されるのは、俺達かも知れない。
『孤独の性餐』には、前代未聞の怪エスパーが登場する。
ゲテモノと言ってしまえばそれまでだが、着眼と発想が独創的である。
物語的にも綺麗にまとまっている。短篇としての完成度は高いと思う。