『新 仕置人』の次は大河ドラマでも観ようかと、レンタル店の棚を眺めていた。

俺は前から気になっていた『花の乱』の第1巻をレジに運んだ。

とりあえず試食してみよう。面白くなかったら、次回から借りなければ良い。

本放送は1994年だから、今から17年前の作品である。

帰宅後、早速DVDを再生してみる。オープニング映像以外の記憶は綺麗に欠落していた。多分本篇は一度も観ていないのではないか。もし観ていたら―いくらなんでも―断片程度の記憶は蘇る筈である。

当時の俺はオープニングだけを観て、茶の間から自室へ退却したらしい。

俺には新作みたいなものである。戦国や幕末に比べると、馴染みの薄い時代を扱っている点にも興味を覚えた。脚本担当は市川森一先生。何かやってくれるかなと期待していたら、本当にやってくれたので感激した。

第一話からして挑戦的である。重厚史劇を望む者を混乱させるかのような奇怪な物語が展開する。無論、個人的には大歓迎である。どんどん羽目を外して欲しい。

大河ドラマを「再現ドラマ」だと思い込んでいる人がいる。恐れながら、それは勘違いである。認識の修正をお勧めしたい。

大河ドラマは「歴史を題材にした虚構」なのである。虚構ならば、突拍子もない方が面白いに決まっている。先日、味舟で合流した若い友人が「NHK大河―ファンタジー説」を唱えていたが、俺も全面的に賛成である。


豪華配役が大河ドラマの魅力だが『花の乱』にも、有力俳優が多数参加している。

このドラマの中では端役脇役でも、現在は主役級に躍り出ている俳優さんもいる。

その辺りも過去作品を追いかける楽しみのひとつだと考えている。

登場人物と同様に出演者一人一人も、各々の変遷と運命を背負っている。

過去作品との接触は「俳優史」の掘り下げにも繋がるのである。

錦之介や京マチ子の出馬も、邦画好きやオールドファンには嬉しいサービスだ。

錦之介は守護大名の代表格―山名(持富)宗全に扮している。

冷血の武将かと思えば、側近(石田太郎)も驚くような寛大な処置を下したりする。

凶暴要素と温厚要素がこの男の中で矛盾なく共存しているのである。

錦之介の闊達演技が、宗全に独自の生命感と存在感を宿らせている。

流石の貫禄と称賛したいところなのだが―年齢的なものなのか、体調的なものなのか―時折、錦之介が、かなりしんどそうに演じているのが気になる。いや、気になると言うより、痛々しくさえある。彼が現世を去るのは、本放送の3年後である。