先日。DVDで『アンタッチャブル』(1987年公開)を観た。
原題は『THE UNTOUCHABLES』。
『UNTOUCHABLE』とは「触れてはいけない」「手が届かない」という意味である。
最初は面白いのか、面白くないのか、良くわからない映画だったが、古武士のような風貌をしたパトロール警官(ショーン・コネリー)が登場した辺りから、俄然精彩を帯び始めた。物語が円滑に動き出す歯車音が聞こえたような気がした。
コネリー扮するマローンは『七人の侍』(1954年)で言えば、勘兵衛に該当するキャラクターだと思う。勘兵衛がスカウトするのではなく「スカウトされる側」に配置されているのが、この映画の工夫である。尤も、作り手が『七人の侍』を意識していたかどうかはわからないが…。
どんな作品を観ていても「黒澤映画の影響はないか」などと、半自動的に探してしまうところがクロサワ狂の悪い癖である。真っ白な状態で映画を観る事はもう出来ないのか。中途半端な知識の蓄えは、評価を誤る要因にも成りかねない。
優秀な軍師を得たネス財務官(ケヴィン・コスナー)は、密売組織への反撃を開始する。最終目標はギャング団の総大将アル・カポネ(ロバート・デニーロ)である。
デニーロが期待に違わぬ異常演技を披露してくれる。
ほとんどマンガに近い役作りだが、凶暴性と滑稽味の融合具合が絶妙であり、デニーロ本人が楽しんで演じているようにも思える。
強烈な敵役の存在が、映画の活性化に貢献している。俳優としても、何かと制約の多い主役よりも、羽目が外せる脇役の方が、演じ甲斐があるのかも知れない。
映画の終盤には、駅の階段を舞台にしたかなり大掛かりな銃撃戦が用意されている。この際、乳母車が重要な小道具として投入されている。どうやら某有名作品の引用らしい。当然、車の中では赤ちゃんが寝ている。この世で最も無垢な存在の周辺で、大人どもが光と闇に分かれて、壮絶な殺し合いを繰り広げる。
その対比が実に見事である。あまりにも見事過ぎて、嫌味に感じるぐらいである。母親のモタモタ振りにもいい加減ウンザリさせられる。彼女の鈍重演技も作り手の計算なのだろうが、それにすんなり乗れるほど、俺は素直ではないのだ。