過日。ザムザ阿佐ヶ谷で『ドードーの旗のもとに 第二章』を観た。

副題は『流れよ我が涙、背に残る熱き君の思い出』と、いささか長い。

入場券には『UNDER THE 2 FLAG OF DODO』と、英題(?)が記されている。

六部構成。上演時間12時間30分―紛れもない超大作演劇である。

第一章は観逃しているし、全章制覇は半ば諦めている。

時間的にも、経済的にも余裕がないからである。

それでも今回観劇を決めたのは、脚本と演出をじんのひろあきが手掛け、出演者の中にあづみれいかの名前を発見したからであった。

あなたは御存知だろうか?『青春アドベンチャー』と『FMシアター』という、ふたつのラジオドラマ番組を。

田舎に住んでいた頃、俺は両番組を愛聴していた。気に入った作品はテープに保存していた。BGM代わりに車の中で流したりもしていた。

じんの&あづみの両氏の名前を知ったのも両番組を聴いたのがキッカケだった。

じんのさんは永井豪や楳図かずおのマンガを異ジャンルに巧みに変換していた。

動画化を拒むような原作を音と声の世界へと、見事に「訳し直して」いた。

あづみさんは両作で主人公を熱演しており、独特の声と共に強烈な印象を受けた。

じんのさんは無理でも、あづみさん本人を視野に捉える好機が巡ってきたのだ。

久々にザムザの「板張りの床を踏んでみたい」という気持ちも、俺を動かした。


当日券を買いに受付に行くと「本日は満席です」という回答が返ってきた。

キャンセル待ちの状態だそうである。劇作家じんのひろあき、中々人気がある。

一時は「立ち見(観)」も覚悟したが、実際はそうはならなかった。

我侭な客に対して、融通を利かせてくれるのも小劇場の良いところである。

容貌凶悪、正体不明でも客は客である。丁寧な応対に俺は好感を覚えた。

俺が案内されたのは「特等席」とでも呼ぶべき、絶景ポイントであった。

地下劇場ザムザの中に簡素な舞台装置が組まれていた。

左翼と右翼に5脚の椅子、正面奥に10脚の椅子が並べられていた。それらを睥睨するかのように『制御室』が建てられ、立脚型マイクが二つ用意されていた。

中空に―映像を映し出す為であろう―変わった形のスクリーンが浮かんでいた。

俺の席は最前列、右側マイクの真ん前であった。

俳優さんの表情や呼吸や肉体の動きが直接感得できる場所である。

幕が上がると、観客は「録音現場に放り込まれたような」気分を味わう事になる。

複数の物語が多重に折り重なり、複雑な物語世界を構築し始める。

随所に遊び心が挿入されているが、基本的には至極真面目な内容であった。

濃厚濃密な2時間。演じる方も勿論大変だが、観る方も体力が要る。俺は疲れた。

あづみれいかは「音響監督」の役で登場し、若手を牽引する斬り込み隊長の如き活躍振りであった。加えて、ポンパ王子役の千釜千昌の鬼気迫る演技も忘れ難い。