2011年盛夏―葉月の日曜日。俺は町に出た。
所用雑用を片づける為である。
遊ぶ事しか考えていない俺ではあるが「100%自由」は有り得ない。
生活運営の為、必要最低限の手続きというものがある。
払うべきものは払わなくてはならない。
払おうと思えば、その分を稼がなくてはならない。
稼ごうと思えば、仕事を見つけ、職場に通わなくてはならない。
従業しようと思えば、体力&健康を維持しなくてはならない。
夢は俺の大好物だが、人間、夢だけでは生きていけないのである。
そのような当り前の事を、俺は移住後、身を通じて感得したのだった。
用事が予定より早く済んだので、俺は足を郊外に向けた。
久しぶりにブックなんやらに行ってみようと考えたのである。
きらめく太陽が路面を照りつけていたが、俺は構わずに歩き続けた。
さしもの太陽もこの頃は威力が少し弱まったような気がする。
朝方や夕方には秋の気配も感じるようになった。
昨年の夏と決定的に違うのは「例の不安」を抱えている点であろう。
あの事故の影響が今後どのような形であらわれるのか?
それを考え始めると、暗澹たる気持ちになる。絶望的心境になる。
俺達が「いつもの夏」「いつもの秋」を取り戻す事はないだろう。
俺達は「見知らぬ明日」の真っ只中にいるのである。
健康を害したり、病気になったら、本や映画を楽しむ事も不可能となる。
残された時間を有意義に使いたいと思う。それには…
人生上の無駄や障害をどう削るか、どこまで削れるかが肝要になる。
俺の時間は俺のものである。俺の好きなように埋めさせていただこう。
ブックなんやらに着くと、俺は「105円の棚」をじっくり見させてもらった。
俺の場合「主力商品の棚」よりも、こちらの方が遭遇率が高いのである。
この日は豊漁(猟)であった。
本日最大の収穫物は平井和正の『メガロポリスの虎』である。
前から欲しかった本である。捕捉した瞬間、歓喜の電流が背中を走った。
このような貴重な本を安価で手に入れられるのが有り難い。
他にも、狙っていた資料類や随筆集を何冊か購入する事が出来た。
十冊買っても、1050円である。神保町だと幾らぐらいになるかな?
大物を仕留めた満足感に浸りながら、俺は店を出た。
途中、たまに利用している定食屋さん『N』に寄り、麻婆豆腐を食べた。
この時間帯だと、食後のコーヒー(アイスも可)をサービスしてくれる。
腹が減っていたので「ご飯大盛り」をお願いする。
喉が渇いていたが、冷水とお茶で我慢する。現在禁酒中なのだ。
家に戻り、パソコンを起動させて、自作のヘボ小説の続きを書いた。
平和な日曜日であった。平穏そのものの時間を堪能した。
誰にも気兼ねする必要がないのが良い。独身者の特権である。
他者―自分以外の人間(血族含む)との接触は疲れる。
無論、友好的人物との交流ならば大歓迎である。
だが、そうではない人の方が圧倒的に多い。それが現実である。
英気を養うべき日にそうではない人とつき合うのは極力避けたい。
避けられない人は気の毒だと思うが、俺にはどうしようもない。