先日。DVDで『チャイナ・シンドローム』(1979年公開)を観た。

原題は『THE CHINA SYNDROME』。

ジェーン・フォンダ&マイケル・ダグラス主演の原発サスペンス。

だが、実質的な主人公は発電所所長を演じるジャック・レモンである。

題名になっている「チャイナ・シンドローム」とは、炉心溶融後に発生する脅威的状況を指す言葉である。

ソレは大地(地球)を貫き、はるか中国まで及ぶという。

この映画、前から観たいと考えていたが、今回ようやく捉える事が出来た。

これほどの緊張感を持ってDVD(映画)を観たのは、初めてのような気がする。物語の展開や登場人物の会話にいちいち過敏に反応してしまう。

現在の状況が状況だけに、記録映画的な迫力を発揮している。

特に原発が地震に襲われる場面には背筋が凍る思いがさせられた。

32年前の映画が、ある種の予言的作品として、新世紀に浮上する。

危険を察知し、娯楽映画という形で警鐘を鳴らした作り手たちの鋭敏さ。

マイケル・ダグラスは製作にも携わっている。彼は素晴らしい仕事をした。

池波正太郎先生もエッセイの中で「抜群の着想」と、絶賛している。

時代の変化が、映画に新たな輝きを加える事もある。

山川元の『東京原発』(2004年)も再鑑賞の価値があると思われる。


中盤辺りから、レモン所長の活躍場面が増える。かつて原子力潜水艦の艦長を務めていたこの男は、自分の仕事を愛している。誇りを感じている。

栄光の海軍から一流の企業へ。アメリカ式天下りというわけか。

天下りについては別の機会に考えてみたいと思う。本題を進める。

水中から陸上へ職場が変わっても、責任感の強さは健在である。

しかし、このような人物は組織内では煙たがられる傾向がある。

金儲け第一主義の企業では尚更であろう。

金儲けを否定するつもりはないが、それよりも大切なものがある筈だ。

金儲けが極点(最優先順位)に達した時、暴走と悲劇が始まる。

俺たちはそれを体験している。お金持ちが自爆しようが、自滅しようが、一向に構わないが、俺たちも巻き込まれるのだから堪らない。

レモン所長は設備の欠陥を世に訴えようとするが、妨害者が現れる。

まったく企業とはバケモノである。異物の存在は絶対に許さないのだ。

妨害どころか、命まで奪おうというのだから物騒な話である。

まるで犯罪組織である。目障りな奴は殺してしまえという論理が凄い。

どこやらの国でも「似たような事」が起きていないとは言い切れない。

巨大な敵に対して、レモン所長は奇策を用いて戦う。流石は元戦士。

巧妙な脚本が、原発制御室を活劇の舞台として成立させている。

この映画は絵空事じゃないんだよと語りかけるような閉め方も印象的だ。