先日。ポレポレ東中野で『日本妖怪伝サトリ』(1973年)を観た。

今日まで開催されていた『東陽一監督特集』の一本である。

終映後に監督本人が登場して、持論を大展開。

原則として「作品解説はやらない」そうである。

緑魔子や佐藤慶の話を聞きたかったが、監督の方針とあれば仕方がない。

その意味では少し残念な内容ではあった。

質問の時間が設けられる事もなかった。監督が一方的に喋っていた。

話自体は面白い。年齢を感じさせない迫力と反骨精神に圧倒される。

これぐらいのヴァイタリティを備えていなければ、映画監督という激しい仕事はこなせないし、務まらないのだろう。

与えられた時間をキッチリ語り尽くすと、東監督は悠然と引き揚げて行った。

この日のトークショーは新作『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』の宣伝も兼ねているようであった。監督曰く「とても良い映画」だ、そうである。

ポレポレ東中野を後にして、俺は中野に向かった。電車に乗るのも馬鹿馬鹿しいので、歩く事にした。

中野で買物と昼食を済ませると、中央快速を利用して、東京へ移動した。


八重洲南口を出、ブックセンターを経由して、フィルムセンターを目指す。

黒澤特集のクロージング上映に駆けつける為である。黒澤祭のフィナーレを飾るのは、シェイクスピア悲劇の翻案―戦国大作『乱』(1985年)であった。

チケットを求めるファンが行列を作っていたが、幸い俺の席は残されていた。

場内で映画通A氏と合流する。

鑑賞後、氏が主催する忘年会に出席する予定であった。

『乱』の上映が始まる。

テレビやビデオを含めて、少なくとも二十回以上は観ている作品である。

評論家先生の評価は低いが、個人的には大好きな黒澤映画のひとつである。

最近疲れ気味なので「途中で眠たくなるかな?」と、心配していたが、そのような事もなく、エンドクレジットまで辿り着いた。

楓の方(原田美枝子)と鉄修理(井川比佐志)の対立場面は何度観ても面白い。

後半の主役は間違いなく楓&鉄である。クレジットの順番は関係ない。

一文字家滅亡作戦を画策する楓。光属性と闇属性を自在に使いこなす鉄。

どちらも素晴らしい。原田&井川は監督の期待に猛演力演で応えた。

映画は劇場で観るのが本道であり、特に黒澤作品は大スクリーンに映える厚味と重量感を有している。

映画学校出身の知人が、黒澤作品を「洋画みたいな邦画だ」と、評していたが、まさにその通りだと思う。

上映後、お馴染みの野上照代氏が姿を見せて「締めの挨拶」を行った。

感極まったのか、野上氏が涙ぐむ瞬間もあった。

帝王クロサワと苦楽を共にしてきたメインスタッフ故の涙であろう。

これからも黒澤現場の体験者―歴史の生き証人として、活躍して欲しい。

外に出ると、センター前に今夜の出席者が集結していた。

A氏が確保しておいてくれたセンター近くの酒宴会場に皆で移動する。

彼らと呑む酒は旨く、いつも時間を忘れてしまう。気がついたら十一時を越していた。翌日は仕事なのだが、面白過ぎて途中で抜けられないのである。


■ポレポレ東中野…http://www.mmjp.or.jp/pole2/

■フィルムセンター…http://www.momat.go.jp/fc.html