「生物と無生物のあいだ」 | big-readerの社会人大学生日記

big-readerの社会人大学生日記

2011年4月からとある大学の夜間主コースにて人生で3回目の大学生活をスタートさせたoffice workerの日記です。

福岡伸一著・講談社現代新書・2007年5月20日第一刷発行・285ページ。


理系の勉強を始めてからの余禄(?)としては、読書範囲に理系分野が加わったことです。講義用のテキストやレポートのための参考文献などはもちろんのこと、一般書でも理系チックな本に手が伸びるようになりました。


この「生物と無生物のあいだ」は、2007年に出版されてからも版を重ねているようです。学者らしい少し硬質な文体ですが、難しい内容をやさしくかみくだいて説明しています。


面白いのは、研究内容をできるだけやさしく詳細に説明しているかたわらで、当時、著者が所属されていた研究所やをエッセイ風に紹介されていること。他にも研究者としての先達をサラリと描写しています。野口英世とかワトソンとクリックとか。


特に、DNAをめぐる研究者たちの熾烈なライバル意識と競争を描く「第6章 ダークサイド・オブ・DNA」と「第7章 チャンスは、準備された心に降り立つ」はとても面白く読めました。学校の授業では、「DNAのらせん構造を発見したのはワトソンとクリック」としか教わりませんが、その舞台裏で起こったドラマを知ると余計に興味をそそられるのでは、と思いました。


また、波動関数で私を悩ませているシュレーディンガーが生命についての考察を行っているという「第8章 原子が秩序を生み出すとき」も興味深かったです。古くはレオナルド・ダ・ヴィンチもそうですが、天才というのはひとつの分野にはおさまりきらない才能を持っているんですね。


著者が研究している「動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)」を人間にあてはめると、まるでマンガやアニメで燃え尽きたキャラクターが砂(灰?)になってサラサラと崩れていく描写は真実なのか、と考えてしまいますね。


同じ著者の別の本も読んでみようかな、と思わせる一冊でした。


★End★