シヌミニョ 短編 切ない気持ちを胸に
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俺は後ろからこの景色を切ない気持ちで見ていた。
誰のことも考えて居ないようでたった一人の存在だけを大切にしてるテギョン、それに明るく楽しくまとわりつくジェルミ、そんなジェルミをからかいながら歩くミナム、そしてそんな3人を転びそうになりながら一生懸命についていくミニョの姿をそっと見守りながら歩く俺、シヌの5人は今日も一緒に居る景色だった。
「遅いぞ、ミニョ!早く来い」
歩いていると、時々隣にミニョが居ないことに気がついて立ち止まりミニョを待つテギョンが声をかける。
そう、たった一人大切な存在のミニョに手を伸ばす。
「待ってください。きゃあ~」
「危ない」
転びそうになるミニョを俺は後ろからサポートする。
「ちっ、大丈夫か?」
「はい」
支えている俺の手からテギョンはミニョを奪っていく。
この瞬間、抵抗したくなる想いを抑えるのに苦労する。
「あっ、シヌひょんごめんなさい」
「いやっ」
「テギョンオッパ、ありがとうございます」
手を握って歩き出したテギョンに笑顔で隣に行くミニョを俺はただ見守るだけだった。
「あぁ~転ばないように守ってたのシヌヒョンなのに、守ってもらえると喜んじゃう鈍感な妹がごめんな」
「ミナム…気がついていたのか」
「何年見てるとおもってんの。しかも、テギョンはいまだに俺とミニョが入れ替わっても気がつかないしな」
そう、ミナムとミニョの兄妹は双子で、出逢いはミナムとミニョが入れ替わって俺達3人の前に現れたのがきっかけだった。
親を探す目的で入れ替わっていた二人に最初に気がついたのは俺だった。
でも、テギョンのが行動が早かった。
何より、ミニョがテギョンを望んでいた。
だから、俺は見守ることしかできない存在になってしまった。
「行動に移さないと守れるものも守れなくなるよ」
「苦しめたくない」
「ふ~ん、シヌヒョンがそれでいいならいいけど」
「おーい!シヌヒョン、ミナム~早くおいでよ」
テギョンとミニョの間に割って入ろうとしていたジェルミがミナムと俺が遅れて歩いていることに気がついた。
「なぁ、シヌヒョンは俺にしといたら?」
「いやっ、遠慮しとく」
「笑うなよ」
「心にもないことを言うな。それに、同じ顔だからとミナムとミニョは違うだろ?」
「ミニョのこと一筋なんだな」
「俺にも実際にはわからない。なぜ、こんなにアイツを求めるのか、見返りなんて考えないで傍に居たい」
「気がついたらいいのにな」
ミナムはミニョのテギョンに向ける笑顔を見つめていた。
俺は見ることができない。
「シヌひょん?!まさか、さっき私が転びそうになった時にケガでもしたんですか?」
「ミニョ?」
「足とか痛めたとか?」
余所見をしていた俺の元にミニョが来ていた。
ミナムがなぜか消えていた。
「シヌひょん?」
「大丈夫だよ。ごめんな、心配かけて」
「さぁ、行きましょ!今日は最近オープンしたドーナツ屋さんのお店に行くんですから。テギョンオッパはアレルギーで食べれませんから。一緒に食べましょ」
俺に向けた無邪気な笑顔に俺は頬に手を伸ばしてしまっていた。
「シヌひょん?!」
「あっ、すまん」
驚いた顔をしたミニョが俺の引っ込めた腕をとる。
「どうしたんですか?どうして、そんな切ない顔をしているのですか?」
「ミニョには関係ないよ。ほらっ、テギョンが不機嫌になるから行ったほうがいいよ」
「でも…」
俺の気持ちに気がつかれたらいけない。
この切ない気持ちは胸に閉じ込めておかないといけない。
抱きしめたい気持ちを抑えて、無表情になる。
いつもの笑顔が出せない。
感情が激しいテギョンよりも俺のが感情を読み取れないとよく言われる。
「シヌひょん!?」
「心配しないでドーナツ買って、家で紅茶を煎れるよ。飲むだろ?」
「はい、楽しみにしてます」
一瞬、俺から離れてテギョンの元に行くときに何か言いたげだったが俺は見なかったことにした。
苦しめたくない。
ミナムは知らない、ミニョは俺の気持ちを知っている。
そして、俺の存在を認識したことをミニョは隠しきれていない。
お互いの感情を胸にしまってしまった。
この先どうなるかはまだわからない。
切ない気持ちを胸に…今は流れに身をおく。
おしまい