Disney+にて『哀れなるものたち』(2023年イギリス・アメリカ・アイルランド合作)を見ました。

 

原作:アラスター・グレイ『哀れなるものたち』(早川書房)

監督:ヨルゴス・ランティモス

脚本:トニー・マクナマラ

出演:エマ・ストーン/マーク・ラファロ/ウィレム・デフォー/ラミー・ユセフ/クリストファー・アボット/マーガレット・クアリー他…

 

第96回アカデミー賞でエマ・ストーンの主演女優賞を含め4部門受賞した作品です。

 

医学生のマッキャンドルスは尊敬する外科医で研究者のゴッドウィン・バクスターに頼まれて、彼の家に住んでいる研究対象のベラ・バクスターと言う、知能が未発達の成人女性の行動や言動などを日々記録して、博士に報告することになります。

 

あまりにも赤裸々に自分の欲望に従い行動をするベラに惹かれつつも、ずっと家の中に幽閉されている姿に疑問がわき、博士を問い質します。

博士からの返答は、ある日博士の目の前で橋から身を投げて亡くなった妊娠中の女性がいて(本当の名前はヴィクトリア)、その遺体を自宅に持ち帰り、お腹の中の子供の脳を取り出して、その母親であるベラに移植したという驚くべき事実でした。

 

博士の告白を聞いても、ベラのことを日増しに好きになっていくマッキャンドルス。その気持ちに気づいてベラに求婚するように促すゴッドウィン。

ベラに求婚し、結婚の承諾を得ますが、ベラは急速に色んな事柄を知っていく中で、今まで知らなかった外の世界に興味を持ち、結婚のための書類手続きにやって来て、すっかりベラの奔放な振舞いに魅了された弁護士のダンカンの誘惑にのって二人で駆け落ちするように豪華客船の旅に出てしまいます。

 

船上で欲望のままに体を重ねるベラとダンカンでしたが…。

 

まるで白昼夢を見ているような、どこか大人向けの残酷なおとぎ話を見ているような感じで見終わりました。

エマ・ストーンさんの演技が凄まじく、映画の冒頭の無垢なままの本能の赴くままに野卑なベラが段々知識を獲得して、自分のことを考えて話し、行動するときの顔つきが全然別人のように違っていて、見ていてちょっとコワかったです。

 

ゴッドウィンがどうしてあのような研究をしていたのか、という背景はわかるものの、個人的にはどうしても禁忌を犯すおぞましさが先に立ちます(気の毒ではあるのですが)。

 

ラストのあの自宅でのシーンは、予感していたものの「あぁ…」とため息をつきたくなるものでした。

独特の映像美でお話として面白くはありましたが映画の中の人間と、それ以外の「哀れなるもの」たちが痛ましくて…。

 

好き嫌いが別れる作品だと思いました。